2013/03/15

書評: メディカルタウンの自分力

以前、健康増進外来という本を紹介した(紹介したブログはこちら)。非常に感銘を受けた本であり、日々の生活・仕事の中で、こういった考え方・取り組みをされている方がいることを知ってもらうか、そして、何か自分でもできないか考えている・・・といっても、大したことはできていないが。

そんなことを漠然と考えていた時に読んだ本が、この表題にある「メディカルタウンの自分力」という本だ。

この本は、「30年後の医療の姿を考える会」の市民公開シンポジウムの内容をまとめたもので、健康増進外来の著者である佐藤先生の講演も含まれている。(佐藤先生の講演については、健康増進外来の内容と重複する内容も多い)

各演者の講演内容がバラエティに富んでおり、また、実際の体験・経験に基づくものが多いだけに、非常に興味深いと感じるとともに、自分の勉強不足を痛感させられた。

医療だけでなく、介護も含めた、コミュニティでの生活、生きるということは、個々人が受け身でなく、自らの力を出して行かなければいけないということを感じた。デイサービス、デイケアにしてもそうである。こちらが良かれとおもって、ご年配の方に手を貸したり、作業をしてあげてしまったが、もしかしたら相手が生きがいを奪っている可能性はないか、という思慮に欠けていたかもしれない。個々人が力を出しやすく、生きがいを感じるような環境を作ることが大事であり、また、個々人が生きていく上で必要な賢さを身につけなければならないと思った。教育にも言及している箇所があるが、いろいろ考えさせられることが多い本である。パネルディスカッションの中で、柳田邦男氏が聖路加の副院長の細谷先生の俳句を紹介し、医療者は広い視野が必要であると話されている箇所も、これまでの医療、医療者の教育、市民の医療への関わり方を考えさせられた。

この本。ぱらぱらと読み直しながら、改めて、多くの知識が得られるわけでもなく、驚きの発見の連続があるわけでもなく、革命的な医療の話があるわけでもない。ただ、ひたすら考えさせられることの連続である。ぜひ、医療者に限らず、読むことをお勧めする。