2013/04/30

生き残る薬剤師 (meditur insight vol.2より)

薬局の生き残り以上に熾烈になると思われるのが、薬剤師の生き残りである。薬剤師は国家資格ゆえ、これまで、人数が増えすぎることもなく、やや足らない状況で管理されている。薬剤師は今後どうなるのか。調剤薬局の生き残り予測を踏まえつつ、考えてみたい。

① チーム医療に貢献する病院薬剤師

病院において、薬剤師の役割は、ますます拡大している。チーム医療の概念になるが、医師・看護師らとお互いに尊重しあい、患者の最善を尽くす上で、薬剤師の持つ薬剤に対する理解は、重要性が高まっている。特に診療科の医師が専門医として特化した特定領域に強くなる傾向が強い現代において、専門外の薬剤の知識まで網羅的に把握している医師はほとんどいないため、幅広い薬剤の知識を医療に反映させる薬剤師の役割は不可欠である。 また、インターネット上に薬剤の情報などが多く蓄積されており、様々なことを勉強している患者も多いだけに、患者からの質問が薬剤に関する踏み込んだ内容の場合には、薬剤師が答えてあげることで、医療チーム全体の信頼性も向上する。 薬に関する幅広い知識と、病院の推進する医療におけるチームの一員としての協調性、そして、患者と接する対面的なコミュニケーションスキルのある薬剤師は、この先、引く手あまたではないだろうか。


② 在宅診療支援の薬剤師

在宅こそ、チーム医療の真価が問われる形態であり、他職種とのコミュニケーションが欠かせない。病棟薬剤師と重複するが、知識、協調性、コミュニケーションスキルを兼ね備えた薬剤師は、在宅医療において活躍する可能性が限りなく高い。この在宅医療での活躍において重要になるのは、他職種の業務内容の理解と歩み寄りだ。薬剤師が訪問したときに何か患者さんが困っている状況だったとしよう。このとき、薬剤師から自分にはできませんと答えてしまうと在宅医療を行なっているチームの一員として十分とはいえない。もちろん、それぞれの専門職の業務範囲が定まっているもののグレーなゾーンについては積極的な歩み寄りがそのチームの活動・行動力を飛躍的に高める。役に立つ・患者のためになる薬剤師というのは、この在宅においては薬剤師の業務範囲に留まらない領域での経験の蓄積、知識の獲得が重要になってくるに違いない。 また、在宅で様々な患者を診るようになると、現在以上に麻薬の処方や無菌調剤が要求される機会が増してくるはずである。調剤薬局に勤務する薬剤師において、そのような薬剤師としてのスキルを備えておくことは、明確な差別化につながるのではないだろうか。

③ 分析・洞察力のある薬剤師

生き残る調剤薬局のひとつとして、様々な情報を集め、患者にフィードバックすることができる薬局を挙げた。ただし、機械が勝手にデータを分析してくれるわけでもない。常に医療環境や周囲の状況を判断しながら、様々な情報を分析し、どのようなことを患者にフィードバックすることができるか、もしくは他の調剤薬局と差別化を図れるような質の向上ができるか、考えることができる薬剤師は、単純に調剤できる薬剤師と大きな差が生じる。分析する力、洞察力のある薬剤師は、今後、重要性が増すものと思われる。

~以上meditur insight vol.2 「調剤薬局の課題と未来」より~

近所の薬局併設型コンビニ(本文とは関係ありません)
薬剤師の養成課程が4年制から6年制に移行し、その課程を終えた薬剤師が現場で活躍し始めている。現場の話を聞くと、本当に6年制の必要があったのか?という懐疑的な声も聞こえてくる。というのも、6年制のカリキュラムで変更になったことで実習等の強化から、新人を即戦力として期待したようなところでは期待外れと感じたところが少なからずあったようだ。この理想と現実のギャップは、ぜひ、薬剤師育成の長期的な視点と薬剤師が関与する業務だけでない医療・介護で求められる幅広い業務の視点に基づき、学生の実習メニュー構成に反映すべきだろう。さらには、日々の現場でも、上述の①~③のような「生き残る薬剤師」育成に向けた積極的な取り組みが重要なのではないだろうか。