2013/09/20

なんちゃってデータヘルス計画でカモになる保険者

データヘルス計画については、以前ブログでも何回か書いているが(8月6日http://meditur.blogspot.jp/2013/08/blog-post_6.html、9月18日http://meditur.blogspot.jp/2013/09/blog-post_18.html)、どこかの賢い人が作るであろう計画ひな形を、各保険者がコピペ、コピペで皆まねするであろうことは想像に難くない。「コピペなら任せろ!」というコンサル会社で腕を磨いた知人がいるので、そのような仕事であれば、ぜひ紹介差し上げたい(連絡は弊社問い合わせ窓口にどうぞ)。

データヘルス計画、コピペでも何でもいいが、やっちゃいけないことを理解しておいた方がいいだろう。従前からこの計画自体が危ういと思っていることを理解してもらいたい意図もある。

~データヘルス計画 本気度レベル(弊社独自基準)~

Level1 なにもしない。具体策のない『強化』を掲げる

計画はまねたけど、何もする気はない。目標には「医療費削減」「ジェネリック率向上」など、具体策が全くない強化策を掲げる。もちろん、あとから評価もしない。分析は「医療費が増えた」といったレベル。カモにすらならない。

Level2 レセプトの分析(中身は不明)をすると掲げる

分析することを決めた。分析することがすべて。分析自体が目的。なので、外部のシステムベンダーや、コンサル会社から、「こんな分析ができますよ~」という営業トークにそのまま乗っかる。逆に言えば、システムベンダーは、こういうレベルの低い保険者を狙え!ということだ。カモの王道。
 

Level3 医学的にわかっている事実を分析で確認する

実はこのレベルが一番やっかい。保険者の担当者レベルの満足感は非常に高い。例えば、「うちの透析患者は、2005年から年々増えていて、1人あたり年500万円かかっていることがわかった」といったことを嬉々として報告しているレベル。透析が年500万円くらいかかることは日本の医療制度を知っていれば誰でも分かるレベル。患者が増えていることも各種統計・報告から明らか。分かったところで、何もない。
また、「検診結果から、糖尿病予備軍の人を見つけました!!」というもの同じこと。分析でも何でもない。検査結果でどういった人に早期介入するべきかは、多くの研究がなされている。単一の保険者レベルで分析し、同じことが分かったところで、価値はない。分析する前から、「医者に行け!」である。疾患ごとの医療費を細かく区分けしました、なんてのも同じ。区分けしただけなら、学生の卒論と同じレベル。
多額な費用をかける正当性はこのレベルにはない、ということを自覚しなければならない。担当者の「分析したぜ!」という満足感が高いだけに一番やっかいだ。コンサル会社は「自称・意識の高い担当者」を狙っている。カモの大本命。

Level4 分析結果を参考に、個別指導などを行う

医療費を抑えることを目的とするならば、医者にかからず健康を維持する、医者にかかったとしても入院・手術などを要する状態のような重症化を防ぐ、といったことになる。例えば、分析結果を元に、高脂血症の薬を飲んでいる人に対し、定期的な運動をするよう指導介入し、代わりに薬をやめさせてみる、といったことだ。健診結果が維持・向上しているならば、医療費削減に貢献したといって過言ではないだろう。Level3との違いは、医療費の増加抑制や、健康増進に、積極的な介入をしていることだ。健診結果だけではなく、レセプトデータや、それ以外のデータなどを組み合わせ、効果的で、継続しやすい指導・取り組み内容を考えるべきだ。カモではなく、純粋にビジネスとしてお付き合いしたいところだ。

Level5 分析結果に基づき効率的な指導やプログラムを考え、アウトカム評価を行う

Level4は介入・指導のやりっ放しに近い。指導が適正だったか効果を評価し、事前に立てていた目標と結果を比較する。目標には、まさにデータヘルス計画で狙うべき項目が挙げられているはずである。そして、結果に応じて、取り組み・指導内容の見直し、対象者の拡大や見直しを行う。簡単にいえば、PDCAサイクルを回すことにある。
さらに言えば、医療者を評価したり、薬剤を評価したり、そういった「ビッグデータ」的なところも見えてくるが、保険者単位での取り組みとしては現実的な話ではない。
カモどころか、若干ボランティア気味にでも一緒にアイデアを考えたいところ。


ボトムアップ・アプローチなのに、ただ分析しただけでは最悪だ

結局、データヘルス計画は分析したところで、医療費が下がるわけでも何でもない。だからこそ、どういったことに取り組むべきか、そのPDCAサイクルをボトムアップ・アプローチで動かしたいという意図なのだ。もちろん、その反対にあるトップダウン・アプローチとは、厚生労働省の中医協などで議論されている医療提供体制や診療報酬の議論である。
各保険者がコンサルやシステムベンダーのカモにならないことを祈る。
(ご相談や、お悩み事があれば、弊社問い合わせ窓口までどうぞ。コンサルします♪♪)