医療、福祉に貢献するために

医療、福祉に貢献するために
~ 株式会社メディチュア Blog

2014/12/28

行動経済学が医療を良くする?

先日、千葉県旭市のシンポジウムを聴いて感じたことを中心に、地域完結型医療における課題と、それらを乗り越えるためのアイデアをブログに書いた(Part.1~4)。

(Part.1) 「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市
(Part.2) おらが街の病院は、たまたま大病院だった
(Part.3) 限りある医療資源を分け合う意識の醸成には時間がかかる
(Part.4) シビックプライドの醸成には住民の協力が重要

そのPart.4の中で、医師確保のための利用者負担、地域負担について述べた。

この内容を考える上で参考になる調査結果が、日本医療政策機構の2008年のレポート(医師不足と負担に関する実態調査(概要))にまとめられている。

これで興味深いのは、医師不足対策に対する負担増は、誰しもが賛成しているわけではなく、高所得・高資産層で賛成が多く、低所得・低資産層ほど反対が多くなっている点だ。これは当たり前の結果と感じるものの、病院完結型医療以上に医師確保が課題となるであろう地域完結型医療を進める上で、医師確保の負担をどのように分担するか参考にすべきだろう。

医師不足対策のための負担増に対する賛否
出所:医師不足と負担に関する実態調査(概要)

大病院を受診すると初診時選定療養のために数千円負担しなければならない地域においては、所得に関係なく費用負担が発生する。費用を負担させる以上、地域住民にはかかりつけ医と病院の役割分担を十分に理解させ、かかりつけ医からの紹介であれば、初診時選定療養の費用はかからないことを周知するべきだ。

それらを理解した上でも紹介状なしで大病院を受診するのではあれば、それはある程度の費用負担はやむなしだ。

余談だが、初診時選定療養の金額の決め方は、行動経済学において、非常に興味深い課題である。医療の現場とは異なる世界でも議論が活発となりそうだ。



2014/12/18

おりがみツリー

昨日、おりがみツリーを見に近所の成育医療センターへ。




成育医療センターの敷地には、ドナルド・マクドナルド・ハウスがあります。
公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン

マクドナルドハウスについては、ぜひ下記ブログをお読み下さい。
「ドナルド・マクドナルド・ハウス せたがや」が今月の雑誌「病院」に載ってます - 医療、福祉に貢献するために

2014/12/17

診療報酬改定と消費税増税で病院収益悪化に

気になった記事、論文。 やはり。感覚的なものだったが、調査で裏付けられた。

麻酔科医の手術時間の予測はそれほどアテにならなかった、との論文。一般外科医・形成外科医・整形外科医と比較し、麻酔科医は予測時間が不正確だったとのことだ。サンプルサイズがあまり大きくないのが引っかかるものの、引用している文献等も含め、手術時間のコントロールにある背景(効率的医療の追求や、質の向上等)が透けて見え、興味深い。
Operating theatre time, where does it all go? A prospective observational study | The BMJ

2014/12/16

健康増進が地域活性化・コミュニティづくりに

今朝の日経の東京地方面に、板橋区がタニタと連携し、2015年度から区民の健康づくりを推進することになったとの記事があった。

板橋区、タニタと連携 区民の健康サポート  :日本経済新聞

この記事とあわせ、今日の日経産業新聞のFiNCの企業向けサービスについて、社内でディスカッションを行った。

企業向けについては、健康な人に健康増進を喚起する意味では、チームとか部署とか、そういった単位でゲーミフィケーションを取り入れるのは非常に有用といった意見が出た。これは、fitbitの企業向けサービスに関する話をアメリカで聴いてきたときにも、同じことを言っていた。今後のトレンドになるように思う。

また、自治体+タニタの取り組みは、最近様々なところで始まっている。(弊社ブログの下記記事も参考にどうぞ)

決戦のときが来た! 福岡市と糸島市の熱い闘い
横浜市民(40歳以上限定)、急げ!

血圧計や体組成計を商店街やスポーツ施設に設置とあった。ディスカッションでは、それを支持しつつも、さらに、区内の公園や施設でチェックインしポイントになるような仕組みがあれば積極的に外出し地域活性化にもつながるのでは、どうせ商店街にチェックインするのなら営業時間中ならポイントが高めの方がいい、といった意見もあった。

健康増進が街を活性化し、コミュニティづくりに役立つ。十分にあり得る話だ。

2014/12/15

衆院選の結果から医療の将来を考える

昨日、衆院選が終わった。今日、衆議院議員会館の前を通ったら、胡蝶蘭などの花を届ける人が大勢いた。

前回の選挙のとき、下記のような「自民大勝により医療が変わるのか」という記事を書いていた。
この記事では、業種別の株価の騰落率を見ていた(当時、暇だったに違いない)。

衆院選翌日(2014/12/15)の業種別騰落率

そこで今日の騰落率を同様に見てみたところ、日経平均はかなり下がってしまったようで・・・。鉱業、小売業以外は値下がり。医薬品は日経平均よりマシなものの0.72%の下げとなっていた。

今回は自民圧勝が事前から予想出来ていたため、株価は選挙結果を反映したというよりは、先週末のアメリカ株式市場の下落を反映したものと思われる。

医療の方向性は大きく変わることはなく、これまでの議論が継続となるだろう。そこで、先日の厚労大臣の記者会見を下記に引用する。

(記者)  衆院選についておうかがいします。各社の世論調査で、自民党が300(議席)を越える勢いということですが、この情勢について、大臣の受け止めをお願いします。
(大臣)  私も拝見をする度にびっくりするほどの数字が出てくるものですから、これいかにというような感じで、自分の選挙区を含め、私もいろんなところに応援に行っていますけれども、野党の皆様方もそれなりに健闘されている選挙区もたくさんあって、そう簡単にいくのかなというのが私の正直な印象でありまして、これはもう何しろ、私たちとしてはこの解散を通じて、これまでやってきたことを説明をし、それからアベノミクスを継続しながら日本大改造をやっていくということについての国民の理解を得る努力を最終最後まで続けていくということしかないんだろうと思うので、特に報道されているような様相についての考えは私はありません。
(記者)  これから予算を組むにあたって、社会保障費の抑制というのは避けて通れないところだと思うんですけれども、ちょっと細かくて恐縮なんですけれども、以前から議論が行われているジェネリック医薬品の普及促進について、改めて、大臣のお考えを聞かせていただきたいなと思います。 
(大臣)  これはもうすでに大きな方向としてジェネリック(医薬品)は活用していくということは決まった方向性だというふうに思いますから、これについてまだやり方が十分ではないという御指摘がございますので、そのことを意識しながらちゃんと対応をさらに進めていくということで、何がさらにできるのかということを予算編成の中でも考えて、一歩も二歩も前進できるようにしていかなければならないというふうに思っています。ジェネリック(医薬品)の質も向上させながら、価格についてもやはり適正な価格で市場で得られるようにするということだと思います。 
出所: 塩崎大臣閣議後記者会見概要 |大臣記者会見|厚生労働省 

社会保障費の抑制について、記者の質問に対し、返答ではジェネリックの質について言及している。時期が時期だけに、本人負担や税負担による医療費負担増の議論はしなかったと思われる。選挙の結果で安定的な状態を作れたからには、医療費の削減のみならず、窓口負担増などに切り込んでくることが想定される。窓口負担増を強いるとしたら、当然ながら、市民感情に配慮し、来年度の医療費の改定は厳しいものとなるだろう。医療業界、自民圧勝の結果とて、何も安堵はできないのが現実だろう。

2014/12/13

タミフルは効くのか。そして、危険なのか。

インフルエンザの流行がかなり広がっているようだ。

そのようなタイミングで、今週のニューズウィークでは「その薬、本当に安全ですか?」という特集を組み、タミフルの話題などが書かれている。

タミフルは、特に若年層で異状行動などの問題が指摘されていた。この記事でも、その辺りのことをコクランの調査や、メーカーが開示していなかった情報があったことなどを明らかにした上で、タミフルの効果に疑問を呈している。

インフルエンザが流行っていることはニュースになっても、こういった内容はなかなか取り上げられない(不幸なことがあれば、またニュースになるのだろうけど)。今回のニューズウィーク、読む価値がある。

2014/12/11

「これでわかる!ダメ医者チェックリスト」は必見!?

仕事上、様々な書籍・雑誌を買っている。

ちょっと疑問を感じる2冊
いい本もあれば、悪い本もある。上の写真は、少し疑問を感じる内容の含まれるもの。

『市販薬の~』の方は、副作用を理由に飲むべきではない、という主張を繰り返している。この本を鵜呑みにしたら、よく効く薬は飲めなくなるだろう。

『PRESIDENT』は、医療需要の見通しや歯科医の見分け方など共感できる・参考にできる内容も少なからずある。しかし、トップの記事は「近藤誠×和田秀樹 頼れる病院、危ない病院」である。当然のことながら、がんもどき理論を述べられている。また、その内容の一部で、名医かどうかの話では、日野原先生のお顔が掲載されている。ただページの下には「写真と本文は関係ありません」と書いてあり、実際、本文に日野原先生は一切出てこない。

さらには看護師の座談会とやらは、不倫だなんだと低俗な話が・・・。また、こっそり教えるというから期待した病院の見分け方は「病院機能評価」だった。病院機能評価は一般人が期待する良い病院を保証するもののではない。一般人のたとえでいうと、「大卒」みたいな基準である。大卒でなくても優秀な人は優秀だし、大卒でも優秀でない人もいる。しかも、大卒の比率が高くなってしまったのと同様、病院機能評価も多くの病院が認定を受けてしまっていて、これを参考にするというのは微妙である。

極めつけは、「ダメ医者チェックリスト」だ。下記に一部を引用した。

  • 看護師に悪口を言われている
  • 「近藤誠」を口汚く罵る
  • シャキシャキしていない
  • 出身大学の偏差値がとても低い

PRESIDENTって、こんな雑誌だったか?? 2番目は「口汚く罵る」のがダメであって欲しい(特集冒頭の記事に近藤誠氏が登場しているだけに、PRESIDENT社は近藤氏を全面的に応援しているのかな?)。

これらの書籍、読む人が様々な情報を持ちえているのであればよいのだが、よく分からず読んでしまうと、「知っている」風の患者が量産され、現場の医療者は迷惑この上ない。以前、ある医者が話していてことを思い出した。

『医者は医学雑誌から下世話な週刊誌、タブロイド紙まで目を通さなきゃならない。週刊誌に書いてあった内容を質問してきたときに、しっかり答えるためには、そのくらいの努力は不可欠。地域住民と長い信頼関係を築くというのは、こういうことの積み重ねなんだ』

この記事で紹介した2冊、興味があれば、ぜひ(個人的には立ち読みでも十分かな・・・)

2014/12/10

医療の競争環境は、適切な医療費につながるのか

自由経済・自由市場の環境下において、競争的な環境ではコストが下がり、一方で寡占的環境ではコストが上がる。これは医療にも通じる考え方なのだろうか。

日本の医療は、自由経済ではない。価格は診療報酬で定められ、病床は規制されている。そのような環境であっても、競争的な環境は医療費の適切化に貢献しているか考えてみたい。

全国の300以上の二次医療圏について、DPCデータの施設別症例数をベースにハーフィンダール指数を算出した。また、医療費の地域差分析(医療費の地域差分析 |厚生労働省)から、二次医療圏の入院医療費の高低を得た。これらの2つの数値の関係を下の図にまとめた。この際、ハーフィンダール指数をわかりやすくするため、300以上の二次医療圏を5つの群とDPCデータのない群、計6群に分類した。競争的環境とは、ハーフィンダール指数が低く、すなわち、二次医療圏内にDPC病院が多くあることを意味している。下の図において、色が薄い部分は医療費が相対的に低く、色が濃い部分は医療費が相対的に高いことを意味している。

二次医療圏ごとの急性期医療の施設集中度と地域差指数の関係
出所:厚生労働省資料(2014年公表)を基に弊社が分析・作成

この結果から、競争的環境ほど医療費が低く、寡占的環境ほど医療費が高くなる傾向が見られた。しかし、価格弾力性がない・病床数の制約があるなどの計画経済のもとで行われている医療は、人口の少ない地域では、意図的に競争的環境を作ることはできない。

つまり、競争的な環境を「患者確保」で生み出すことは望ましくないと考えている。そこで大事になるのは、医療の質を高めるような競争を生み出すことである。医療施設の集約化(寡占化)は、限られた医療資源を有効活用するためにも不可欠だろう。その集約化の取り組みを推進しつつも、医療の質で競争させることで、低コスト・高価値の医療を実現できるよう国全体をマネジメントすることが理想だ。

計画経済でやっている以上、患者確保で競争するのはベストとは言えない。そして、医療の質で競うことは、患者にとっても大きなメリットがあるだろう。

2014/12/09

急性期医療において、集約化は進んでいるか

医療の質と効率を考えるとき、人的医療資源(医師や看護師等)や物的医療資源(医療機器や病院建物・手術室等)は有限であることを前提とすると、ある程度集約されることが望ましい。それらについて、現在、弊社はデータ分析調査を行っているのだが、7月に下記のような乳がんに関する医療の集約化について記事を書いた内容をアップデートしたので、紹介したい。

7月に書いた記事
医療の集約化は進んでいるのか - 医療、福祉に貢献するために

アップデートした結果、件数上位10位までの施設の集約化は、2012年度データよりもさらに進み、20位、30位、50位、100位、いずれのデータでも集約化が進んだ結果となった。


また、ハーフィンダール指数で見ても、わずかに上昇していることから、集約化が進んでいると言うことができるだろう。

この結果、医療の質はどうなったか。理想はそこまで議論したいのであるが、その議論に耐えうる情報は持ち合わせておらず、どうこう言うことはできない。そこで、せめて、どういった疾患において集約化が進んでいるか等の議論できる材料を提示できればと考えている。

2014/12/08

個人的に全く理解が足らない介護制度

土曜は介護報酬のセミナーに。資料等では見ていたつもりでも、理解が足りないところが多い。そんなときは人の話を聞くに限る、というわけで、3時間半の話で「色々知らないこと」を知る。

弊社立ち上げ直後は、毎日、暇を持て余していたので、近所の通所リハ施設で勉強をさせてもらっていた。ただ、それだけの経験では、介護の現場は何も分かっていないことは重々承知していたのだが、セミナーのおかげで、在宅に対する考え方など、医療制度だけの理解ではまったく意味がないことを痛感した。

複合型サービスの話なども興味深かった(文字で読んでいた以上に、現場での意義や、運営での新しい取り組みなどが興味深かった)。

これから2、3ヶ月は介護の勉強をするにはいい機会だろう。足りなかった理解を深める努力をしたい。

2014/12/05

シビックプライドの醸成には住民の協力が重要

■医者は疲弊しきっている

会場からあがった声だった。「患者さんがより良い医療を受けるためのシンポジウム」で、地域住民が感じていたのは、旭中央病院の医師が疲弊しているという問題意識だったのだ。

医師がなぜ疲弊しているのか。・・・きっと医師が足りないからだ、と考えたのであれば、怒りの感情も理解できなくはない。

話は変わるが、自分が車を運転している時に渋滞にハマると『この渋滞は、他でもないお前の車も一因だ』という言葉を思い出す((事故渋滞のときは違うのだが)。なぜ混むか。他人事のように考えるが、そもそも自分も同じ流れに乗っているではないか。ならば、イライラしても仕方ない。渋滞の一因となってしまったことを皆に詫びるつもりで、安全運転をしよう、と言い聞かせている。

さきほどの医師が疲弊している話も、この渋滞と同じことだと思っている。医師が疲弊しているのは他でもないあなたが外来にかかっているからですよ、というシチュエーションがあるはずだ。

千葉県保健医療担当部長の古元氏は、兵庫県の柏原病院の事例を紹介していた。(柏原病院の取り組みについては、以前のブログ記事の中のリンクをどうぞ⇒リフィル処方箋は是か非か

この柏原病院の教訓から言えることは、医者が疲弊しているのを回避する術は医師を増やすだけではないということだ。つまり、まず言えることは、『医療者を疲弊させないような努力』、これがよい医療を受けるための重要なポイントである。

■シビックプライドをいかに住民起点で醸成させるか

旭中央病院に来る医師は3年程度で帰っていくらしい。これは旭中央病院だけが特別ではなく、全国どこも似た話だ。せめて残ってくれる人が少しでもいてくれれば・・・・という悩みを打ち明けてくるのは、地方の病院長であれば常識というくらい共通の悩みである。

ある病院では、地域の中核病院で勤めていた地元開業医の二代目医師が、その病院を辞め、別の地域で開業すると聞き、強いショックを受けていた。「うちを辞めるのはいずれ家を継ぐこともあるから・・・と覚悟していたが、まさか別の地域に行ってしまうとは。せめて同じ地域に残ってくれるのならば、まだ良かったのに」という言葉からは、嘆きとともに、なぜ?どうして?という疑問が強く感じられた。

そこで、その地域で提案したのが、シビックプライドの醸成、である。詳細は省くが、行政、住民を主体に、医療者に対し感謝する文化を作る具体的な提案をした。郷土愛は、その土地で生まれた人が感じる愛着のようなものだ。しかし、そこで生まれていない人はなかなか愛着がわきにくい。その概念を超える考え方がシビックプライドだ。その地域に貢献することで、住民としてのプライドが芽生えるのだ。医療者は元来シビックプライドの塊のような職種であるのにも関わらず、わずか3年で帰ることが前提となっていたり、そもそも過重労働であったり、プライドが醸成されにくい状況となってしまっている。

それを意識的に芽生えさせるには、医師に「シビックプライドを持って患者に接しろ」と命令しても意味が無い。医療を受ける患者側が感謝の気持ちを伝えるべきなのだ。

地域完結型の医療における重要なポイント2つ目は、『住民起点のシビックプライドの醸成』である。

■「医師確保費用」 選定療養費の2,900円は利用者負担、税金は地域負担

医師確保をするにはお金がかかる。大病院では紹介状がない患者ばかりを多く見ていれば、診療報酬上冷遇されてしまう。これは地域の住民が「診療報酬では冷遇されても、おらたちが選定療養費を払うから先生診てくれ」という認識を、医療者・住民ともに持つべきだ。

制度上致し方無い、なんて説明を病院がしてはいけない。選定療養費は、まさに利用者負担である。立派な医師を確保するための策として、利用者が負担する金額として、選定療養費をうまく使うのであれば、金額は地域住民が決める、といった案も良いかもしれない。

一方、行政・自治体を頼った医師確保において、ベースとなるのは税金である。税金は病院を利用する人もしない人も負担する。つまり、これは地域負担と考えることができる。

この利用者負担と地域負担。バランスを取りつつ、利用者が理解を深めることこそ、真に重要なことだ。地域完結型、重要なポイント3つ目は、『良い医療を受けるための利用者負担、地域負担の理解』である。


■まとめ

旭市のシンポジウムを聞いた。そのことで、これまで考えていた地域完結型医療を目指していく上での課題を乗り越えるための重要なポイント3つを整理した。
  1. 医療者を疲弊させないような努力
  2. 住民起点のシビックプライドの醸成
  3. 良い医療を受けるための利用者負担、地域負担の理解
医療資源が限られ、病院完結型で完成している地域であっても、医療機関同士の競争が激しい地域でも、上記3つの考え方は共通である。この3つはいずれも住民・患者が重要であり、病院任せにはできないことだ。個人的には、ある地域で提言させていただいた取り組みが実際うまく行くか検証しながら、多くの地域でお手伝いをできれば、と思っている。 (4回シリーズ、終了)


(Part.1) 「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市
(Part.2) おらが街の病院は、たまたま大病院だった
(Part.3) 限りある医療資源を分け合う意識の醸成には時間がかかる
(Part.4) シビックプライドの醸成には住民の協力が重要

2014/12/04

限りある医療資源を分け合う意識の醸成には時間がかかる

■紹介状は潤滑油

全国各地の病院で同様の傾向が見られることだが、旭中央病院も例外ではなく、外来の待ち時間は長いらしい。待ち時間が長いのは、患者が多すぎるからなのだろう。しかも旭市の住民は30%しかおらず、あとはそれ以外から来ているらしい。この状況を変えるには、国の政策でもあるかかりつけ医の推進、二人主治医制の推進が不可欠と開業医の江畑氏は話されていた。

江畑氏は、これまで開業医と旭中央病院は、「紹介状のやりとりが自由になされていた。これからは、紹介状を潤滑油として活用していくべき」と主張されていた。潤滑油という表現は、非常に考えこまれた言葉だと思う。開業医から病院へ紹介状を介し病院の医療者が円滑に機能し、病院から開業医へ紹介状を介し円滑に医療が継続される。開業医も病院も独立した医師が運営しているが、医療自体は継続するのであって、それには紹介状が重要という考え方と理解した。

さらに旭市の区会長が説明された言葉が非常に印象に残った。(以下、弊社の意訳)
主治医は身の回りのことも相談できるような医師を探すのが重要である。主治医が決まっていれば、紹介状には、これまでの長い経緯を書いてもらう。中央病院の医師は代わる代わる来ており、患者個人個人の長い経緯まで把握するのは難しい。主治医からの紹介状には、そこまで書いてもらうようお願いする。
弊社の意訳で恐縮だが、この発言には、いくら旭中央病院が身近な病院であったとしても、医師ひとりひとりは患者の長い歴史や家族背景までを理解してもらうことは難しい、というかかりつけ医の本質的な価値を示唆していると思う。それを期待する相手はかかりつけ医であることを患者側も理解せよ、というメッセージだったと思う。さらに区会長の言葉は具体的な話に及んだ。
いつもお腹が痛いと主治医に話している時に、これは中央病院に紹介すべきだと判断したとする。そのとき、この腹痛はいつもの腹痛とどう違うか等のきめ細やかな病状を中央病院に説明・配慮をしてもらうためには、かかりつけ医が大事だ。市民がそうしてもらえるように(かかりつけ医という制度を理解し行動を改める)努力しなければいけない
これは全国共通の話だ。かかりつけ医が大事だというのは容易い。しかし、市民が真の意味を理解するためには、この区会長のような市民目線でのメリットを分かりやすい言葉で伝える必要があるだろう。

■医療のみでは対処できない時代が来ている 

地域に根ざしているだけでなく
非常に高度な医療も提供している旭中央病院
千葉県医療担当部長の古元氏は、地域包括ケアという言葉を説明する際、これまでは病気を治すことに主眼を置いており、病院が中心であった、一方、生活習慣病や認知症、介護といった諸問題に対応するには病院だけではなく、地域全体でケアを考えなければならない、それが地域包括ケアの考え方だ、といった主旨のことをおっしゃっていた。

しかし、市民に地域包括ケアの概念を理解させるには、時間がかかるように感じた。それは会場からあがった「医者は疲弊しきっている」という声だ。、連続記事の最後となる明日は、この声に対する考え方と、ある地域で行ったプロジェクトでの弊社からの提言を紹介したい。




(Part.1) 「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市
(Part.2) おらが街の病院は、たまたま大病院だった
(Part.3) 限りある医療資源を分け合う意識の醸成には時間がかかる
(Part.4) シビックプライドの醸成には住民の協力が重要

2014/12/03

おらが街の病院は、たまたま大病院だった

昨日の記事(「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市)の続き。本日は開業医と旭中央病院の両先生の話を紹介したい。

■完成された「かかりつけ大病院」

国は、医療の内容を向上・維持しつつも、医療費を抑制し、限られた医療資源を有効に使うべく、医療機能の分化を推進している。これまで、病院完結型の医療(簡単に言えば、最初から最後まで病院が面倒を見てくれるという意味)であったものから、地域完結型に移行しようとしている。

そのような中で、旭市においては、すでに旭中央病院が地域に根ざした病院完結型の医療を提供していて、地域の開業医は、旭中央病院を支える形で機能していたようだ。病院間でも競争は起きておらず、むしろ周辺市町村の医療機関が苦しくなっていく中で、旭中央病院の役割が拡大していたのだろう。

そして、旭中央病院の紹介率は40%に満たないという。これは大病院においてはかなり苦しい数値だ。本来であれば、地域の開業医と役割分担し、紹介患者だけを見るべきところなのだろうが、実態は「かかりつけ大病院」である。

選定療養費は約2,900円までアップ
旭中央病院の正面玄関で見かけた選定療養費改定のお知らせには、約2900円まで引き上げたことが書かれていた。紹介率を上げなければ、診療報酬の面で冷遇されることを考えると、病院側としては致し方ない対応だろう。

この紹介率が上がらない背景には、旭市の開業医が25名、旭中央病院には医師250名、というアンバランスさがあると思われる。外来診療を担う開業医が25名しかいないのは、旭中央病院があったから開業しづらい、外来を旭中央病院が担っている、という事情があったに違いない。これまで、そのようなことを許容していたのは、何も旭市だけではないだろう。シンポジウムを聞いていて、機能分化を進めようとしている大義は理解できるが、地域事情が許さないところもあるのだと改めて認識した。

また、旭中央病院の院長は「機能を分担する相手がいない」とおっしゃっていたのも印象的であった。今後、このような医療施設の限られた地域においては、地域医療ビジョンでの機能分化の議論も地域事情に十分な配慮があって然るべきだろう。

■患者側の「おらが街の病院」信仰

そしてシンポジウムを聞いていて感じたことが、あまりにも身近に「旭中央病院」があるために、ちょっとしたことでも旭中央病院、何かあったら当然旭中央病院、という意識だ。これは昨日今日で生まれた意識ではなく、長年、地域において貢献してきた病院だからこそ、旭中央病院が身近にあり、その病院が厚生労働省の区分で500床以上であったとしても、身近であることには変わりない。

この意識は、他の地域での大病院でも同じことが言える。病院がたくさんある地域では、このような意識はそれほどまで強くないのだが、病院が限られた地域では、無意識なまでに、何かあったら○○病院、なのだ。

最近では、紹介状持参が原則になったことで、開業医を受診した患者から「どうしても中央病院に紹介状を書いて欲しい」と言われるケースもあるという。かかりつけ医の役割としては、経過観察が必要な状況を患者に説明しても、なかなか理解してくれない患者もいるようだ。

旭市においては、大病院信仰というよりも、「おらが街の病院」信仰が、たまたま大病院であったに過ぎない。それを500床以上だから・・・という全国画一的な政策は、地域には馴染まない。

政策的な方針転換が検討されている以上、全国的に機能分化の議論が始まるはずだ。たまたま500床以上だった旭中央病院は、全国に先駆けて機能分化の問題に直面しているということだろう。全国的な議論を行う上で、この地域の課題を理解することは非常に重要なのではないだろうか。

次回は、より良い医療を受けるために患者ができることを、旭市の区会長と、千葉県保健医療担当部長の古元氏の話から考えてみたい。(続く)

2014/12/02

「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市

週末、千葉県旭市で開催された「患者さんがより良い医療を受けるためのシンポジウム」を聴いてきた。わざわざ片道3時間以上かけ、よそものの自分が千葉の話を聴きに行ったのは、言うまでもなく目的があったからだ。

■「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市

旭市には国保旭中央病院があり、医療関係者なら知らないものはほとんどいないであろう超有名病院だ。しかし、ここ数年、ニュースになるのは医療の継続が危機的な状況にあるという内容ばかりであった。

病床規制の問題1:千葉県の病床配分と医療危機|医師・医療従事者向け医学情報・医療ニュースならケアネット
再生に懸ける銚子病院(中) 旭中央病院の“悲鳴” | 医療介護CBニュース

このようなニュースが流れている旭市において、「患者さんが・・・・」という主題のシンポジウムの開催は非常に興味深いと思ったのが、最初の理由だ。

また、今年は特に医療費の地域格差について、ブログでも記事を書くことが多い。

医療費格差の解明にビッグデータは要らない
都道府県間の医療費格差だけでなく、介護にも差がある
医療費の地域差、どう解消したいか。ただ下げれば良いのではない

この医療費格差を考える上で、国保の状況を比較した結果において、旭市は全国でもトップクラスに医療費が少ない市のひとつだ。下記は2012年度の全国の市区の比較なのだが、全国で5番目に低く、離島である沖縄を除くと、愛知県田原市に次いで2位である(田原市も旭市も神栖市も、陸の孤島??)。

この医療費が低い要因を探るのに、シンポジウムは非常に良い機会ではなかろうか、と思ったのが2番目の理由だ。

2012年度 市町村国保における1人あたり医療費 低い順 TOP10(町村は除く)
出所: 厚生労働省 医療費の地域差分析(2012年度)を基に作成

■会場には200人以上の地域住民が

会場は九十九里浜の目の前
片道3時間かけて到着した会場には60歳以上の年配の方を中心に200人以上集まっていたと思われる。この地域における医療に対する関心の高さがうかがえた。会場内では、近所の人同士なのだろう、そこかしこで、挨拶がなされていた。(東京から来た自分はかなり場違い・・・)

基調講演の前には会場の参加者向けに、どこから来たか、何歳か、行天氏から質問が投げられたのだが、ほとんどの人が旭市から来ており、また年齢層は高めだった。

そして、シンポジウムは地域住民の関心の高さを反映し白熱したものとなり、予定時間を30分弱オーバーして終わった。

「患者さんがより良い医療を受けるためのシンポジウム」 プログラム
講演では、患者さんがより良い医療を受けるためのヒントが多く散りばめられていた。ヒントのいくつかは、医療者確保に困っている病院で自分が改革の提言をした内容と非常に似たものもあった。これらの講演の内容については、明日以降のブログで書こうと思う。地域完結型の医療を目指すに当たり、何かしら参考になれば幸いだ。(続く)

(Part.1) 「医療体制の維持」と「医療費の低さ」から興味深い町、千葉県旭市
(Part.2) おらが街の病院は、たまたま大病院だった
(Part.3) 限りある医療資源を分け合う意識の醸成には時間がかかる
(Part.4) シビックプライドの醸成には住民の協力が重要

2014/12/01

市民向け公開講座の目的は民間病院から学べ

先週、民間病院の市民向け公開講座を聴いてきた。平日の午後にも関わらず、50名以上の出席があり、大盛況であった。

しかし、盛況ぶりには何の疑問もない。その講演を聞けば、大盛況であった理由は明らかだ。

  1. 説明が分かりやすい
  2. 病院までのアクセスに配慮がなされている(無料送迎バス等)
  3. 継続的な聴講にインセンティブがある

1点目、説明が分かりやすい。多くの医師は大勢の市民向けに話すことに決して慣れているわけではない。しかし、平易な言葉で、身近なトピックを織り交ぜ、質疑応答に時間をかけることで、分かりにくい印象はまったくなかった。一方的に話すのではなく、50数名を相手に、親身に相談にのっているかのようだった。話をされていたのは、比較的若手のドクターであるにも関わらず、こういった経験が十分あるのだろう。なかなか真似できないスキルを身につけていた。

2点目、アクセスに配慮がある。無料送迎バスは高齢者にはありがたいだろう。実際、参加者の多くは60代以上であり、駅から徒歩15分とは言え、坂道を歩くのはそれなりに負担だ。わずか15分の距離であってもを送迎バスを出す配慮はさすがである。(公立病院でも市内巡回バス等が来てくれるところも多いかな・・・)

3点目、継続的な聴講にインセンティブ。この病院では、公開講座を受講する度にポイントカードにスタンプを押してもらえ、スタンプが6個貯まると自費の検査を割引きで受けられる仕組みだ。健康に対する意識を高めることができ、さらには検査で割り引かれるのは、市民にとって悪い話ではないだろう。

ポイントカード
先週金曜に聞いたのは、循環器疾患に関する話だったのだが、講演の中で印象的だったのは単に「ぜひ検査を」「ぜひ治療を」と勧めるのではなく、地域におけるその病院の役割とその病院の持つ先進性が地域住民にいかに貢献しているかをアピールされていたことだ。おそらく、参加者の多くは、「近所にこんな素晴らしい病院と素晴らしい医師がいて、本当に良かった」と感じたに違いない。繰り返しになるが、押し付けがましさは全くなかった。公開講座の目的は「患者獲得」ではなく、「病院の『ファン』を作ること」に主眼を置いているに違いない。


2014/11/27

健康を応援する金融商品

先月、外部セミナーで松本市の取り組みについて聞いた。松本では、松本地域健康産業推進協議会なるものがあり、その取り組み事例として、信金の定期積金が紹介されていた。

松本信用金庫のファミリーサポート定期積金のちらし
この商品は、ライフサポートサービスと健康関連サービスが大きな特徴で、医師・看護師などに電話相談できるとのこと。サービスを受託している会社は、医療相談では定評のある会社で、クレジットカードや医療保険等の付帯サービスも請け負っているところだ。

この2つのサービスをセットにした『ファミリーサポート定期積金』は、全国の信金の共通商品のようで、探せば地元の信金でも扱っている可能性がある(※信金中央金庫2014年ディスクロージャー誌では、2014年4月から提供しているとのことなので、募集口数に達していない限り、全国の信金で販売しているはず)。興味があれば、確認してみると良いだろう。

ちなみに、健康情報誌やがん検診受診者対象の抽選で当たるディズニーランドのチケットは、松本信金独自のサービスのようだ。

信金にこのような商品があると聞いたら、医療機関の広報担当や地域連携担当は、積極的にアプローチしたい!と思うのかもしれない。定期積金がきっかけで、信金と病院が共同でセミナーを、なんてことになるかも!?

2014/11/26

不正受給で困った事態に

これはきつい。

ニュース | KSB瀬戸内海放送



不正受給自体の責任の所在は明らかになり、処罰も決定したものの、病院が破産手続き中で、返還するためのお金がどこにもない状況になったようだ。

住民も後期高齢者広域連合も不正受給の被害者だ。それなのに、お金まで捻出しろというのはあまりにも・・・だ。

金融機関には、セーフティーネットとなる預金者や契約者を守る仕組みが用意されている。医療も同じような仕組みがあって然るべき・・・とこのニュースを聞いた瞬間に思った。

2014/11/25

薬剤師の役割拡大を知っているか

2014年10月の雑誌「病院」では、病院薬剤師の役割をテーマにした特集が組まれていた。

医学書院/雑誌/病院
病院薬剤師会会長の文章で書かれていたとおり、薬剤師の業務は年々拡大し、1970年前後と比較すると、非常に異なっている。文中の説明で用いていた図を引用・再作成したものを下に示す。


薬剤師業務の拡大(クリックすると拡大)
出所:病院薬剤師に求められる役割 (日本病院薬剤師会 会長 北田光一氏、病院73巻10号 2014年10月)を基に作成
薬剤師が、院内薬局から、外来・病棟へ、というのが最近の流れだ。このような役割の拡大は、病院薬剤師の不足を引き起こす。積極的に採用している病院が多いとは言え、うまく薬剤師を確保できない病院は、上記のいずれかの業務のクオリティを下げることとなる。下がったクオリティは、看護師・医師等の他職種がカバーし、それが無理な場合は患者が受ける医療の質が下がる。もちろん、医療の質を下げないために、薬剤師の多くは、日々多忙な業務に追われているのが現状だ。

9月末の日本医療薬学会年会では、病棟業務を効率化し、薬剤師が本来の業務に集中できる体制を作るため、テクニシャンの活用・役割分担の議論がなされたとのこと(出所: 2014/10/1 薬事日報)。上の薬剤師業務の拡大を見れば、その一部をテクニシャン・アシスタントが行っても問題がない内容もある。

ある病院では、生理食塩水や輸液のような重い薬剤を運ぶ業務を薬剤師が行っていたりする。もちろん、その業務だけであれば、薬剤師の資格など何の役にも立たないだろう。患者とて、そのような業務を行う薬剤師に高い給与を払っているつもりはない。

薬事日報では、日本医療薬学会の議論から、デンマークの薬局の事例を記事にしていた。その記事によると、デンマークの薬局の特徴として、以下の点が挙げられるという。

  • オーナー薬剤師は4件まで薬局を開設できる
  • 各薬局に平均1.8人の薬剤師が在籍(オーナー薬剤師以外で)
  • 各薬局にテクニシャンが約8人在籍

テクニシャンの多さは、今後の日本の薬剤師の役割分担を考える上で、興味深い数値だ。


テクニシャンなどの議論は、何も今始まった議論ではない。適切なコストで、医療の質の高さを実現するために、このような議論が展開されている点は重要だ。しかし、この議論は薬剤師の業界団体だけが考えれば良いのではない。患者も積極的に議論に加わるべきだろう。そのためにも、患者がどのような恩恵を受けるか開示されることは不可欠なはずだ。

2014/11/24

週刊誌の見出しはいかがなものか、内容は間違っていないが

週刊誌はキャッチーにせざるを得ない事情があるのだろう。

ただ、下の記事。冒頭の文章は、いかがなものか。

30万人の「医療ビッグデータ」がはじき出した 部位別・男女別・ステージ別の計238種類 これがすべての「がん」の5年生存率ナマ数値だ | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]

医者が決して教えてくれなかったというが、ニュースでも新聞でも話題になった内容だ。全がん協の公表数値を基に記事を書かれているのだが、この数値は隠そうとしたりする類のものではない。また、全がん協の会議には、前職でオブザーバー参加した経験もある。その中での議論は、情報を公開することに対し前向きで、いかに情報をより良いものにしようか努力していた印象が残っている。

情報を開示しようと医療者側が歩み寄っているところを、患者側も理解できるよう努力しなければならない。「医者が教えてくれなかった」と何でも医者のせいにしては行けない(そういう論調での記事は好きでない)。

全がん協の数値は32施設の集計結果に過ぎない。たった32施設の数値だが、このような集計がなされたものは他になく貴重だ。がんの生存率データを取るのには、医療者の努力と患者の協力、それに長い年月を必要とする。それだけに32施設から一気に施設数を増やすことは難しいだろう。しかし、がん登録を義務化するなどの動きもあるだけに、今後、充実が期待される点だ。

記事の内容自体は間違っていないだけに、医者の悪を記事が暴く的な見出しや「医者が決して教えてくれなかった」の文言が残念だ。


この内容に関連する記事はこちら
がん対策の指標評価 - 医療、福祉に貢献するために
患者視点が置き去りになったDPC/PDPS制度 Part.4 - 医療、福祉に貢献するために

2014/11/23

医療の機能分化を阻む大きな敵の続き

昨日、機能分化を阻む敵は「患者の意識」であることを書いた。

日経ヘルスケアの9月号を読み直していたら、48ページの記事に示唆に富むコメントが記載されていた。

日経ヘルスケア 2014年9月号 特集記事
今のような曖昧な方法で「ゲートキーパー」を定義していてはうまくいかないと思う。まずは国民的合意を形成すべき。(60歳代男性、産科・婦人科)

かかりつけ医・ゲートキーパーの役割が明確でなく、ただ点数で制約を設けていては、昨日のような「患者の不満」の受け皿はどこにもない。また、制約を回避するための『紹介状書き』を無理強いされるかも、という日経ヘルスケアに書いてあるコメントも、確かに、と頷ける指摘だ。

日経ヘルスケアの9月号の記事、読みなおして改めて色々考えさせられるポイントがあった。

日経ヘルスケア

2014/11/22

医療の機能分化を阻む大きな敵

先日、ある公立病院で掲示されていた「患者からのご意見」を眺めていたところ、まだまだ機能分化の実現は難しいと感じることがあった。

掲載されていた意見は、以下の様なものだった。
「原則紹介制に変わります」とのことですが、それでは市民が簡単に受診できなくなります。市税を使っている病院と言えるのでしょうか。市民のための病院ではありません。『市立病院』の名前をかえるべきです。
「かかりつけ医」「近所の病院」に行って下さいと先生・看護師に言われ、傷つきました。もう来ないで下さいと言われたように感じ、悲しく暗い気持ちになりました。
先生から、クリニックへ行くように言われました。たくさんのクリニックでダメで困ったからこちらに来たのに。たらい回しはやめてください。
どれも患者目線では納得感のある内容だ。また、どこの病院でも多かれ少なかれ、このような批判は受けていることだろう。

昨今、医療機関は機能分化、役割分担を推し進めており、大病院は外来の受け入れを抑制し、入院に必要な患者を中心に診るようにしている。軽症・軽度の患者は、まず地域のかかりつけ医を受診し、そこで必要であれば病院へ紹介してもらうのが一般的な流れだ。

また、病院を退院後、状態が落ち着いたら、地域のクリニックで経過を診るようになっている。いつまでも大病院を受診し続けるのは、医療資源の効率的な活用とは言えない。


医療資源の効率的な活用を考える上で、機能分化は重要な課題だ。ただ、なかなか機能分化が進んでいないのが現状である。行政はなかなか機能分化を推し進めない医療機関に対し、診療報酬等で制約を加えようとしているが、一番の問題は、上記のような意見を素で言ってしまう患者の意識なのではないだろうか。

かかりつけ医の重要性などを説く市民講座などは各地で開催されている。それでもなかなか理解が進まない。どうしたら良いか今後も考えていきたい。

2014/11/19

マリファナでも糖尿病でも、興味を持たせるには、「見せ方」が大事

USのYahoo! HEALTHのトップページ。
Yahoo! HEALTHのスマートフォン画面
画面のハードコピーはスマートフォンのものだが、タブレットやPCで見てもオシャレなデザインになっている。

最近ではantenna(https://antenna.jp/)などがこのようなデザインだが、内容はこれまでと変わらなくても、見せ方次第で、何だかとても興味が湧くものだ。

例えば、上のスマホの画面。内容は、マリファナと糖尿病なのだけど、格好良く見えるから不思議だ。

2014/11/18

ASEAN100に病院グループは3つ

昨日の日経朝刊。
日本経済新聞社は英文媒体「Nikkei AsianReview」(http://asia.nikkei.com/)で成長著しいアジアの企業情報を大幅に拡充します。まず20日から、各国の代表的な上場企業のニュースやデータを重点的に報道する「ASEAN100」を始めます。
 上記のASEAN100。ヘルスケア関連では、シンガポールのRaffles Medical Group(http://www.rafflesmedicalgroup.com/)、タイのBangkok Hospital Group(https://www.bangkokhospital.com/en/)、マレーシアのIHH(http://www.ihh-healthcare.com/index.php)が書かれていた。

日本では医療機関は原則非営利であり、株式上場は考えられない。ただ、質の高い適切な医療を継続的・安定的に供給できるのであれば、そういった形態は問わなくても良いように思う。

かつて保険業の仕事をしていた当時、生命保険会社が相互会社から株式会社への転換を図る議論が活発になされていた。そのときの議論と共通しているように感じるが、誰のための組織の存続なのか。また利益は誰に分配すべきなのか。突き詰めていけば、病院とて、株式会社であっても、うまく運営できるように思う。

アジアで拡大している病院グループは、日本の医療にどのような影響を与えるのか。気にする上で、日経のサイトは役に立つのか、楽しみだ。

2014/11/17

高齢化は世界各国の共通課題

医療費増大には、複合疾患や障害(不能状態といった方が適切か?)が大きな影響を及ぼしているというカナダの調査に基づく記事。

Focusing on comorbidity and disabilities can reduce healthcare costs in aging population

医療費(おそらく介護費用も含むものと思われる)は、高齢者の増加により、構造的な変化が起きていて、増大している理由は、心疾患やがんといった疾患ではなく、認知症や運動機能障害などの日常生活に支障をきたす障害が大きな影響である、といった感じの内容が書かれている。

日本でも高齢化が急激に進んでいるせいで、認知症の増加などは世界の先頭を走っているという話を聞いたことがある。これからは、いかに不能状態を作らないか、不能状態になったとしてもそれを簡易にサポートできる仕組みがあるかが大事になってくるのだろう。

結局のところ、この記事の言わんとしているところは、「健康寿命」の延伸と一致している。日本が高齢化による医療費増大をどうコントロールするかは世界が注目しているに違いない。

2014/11/16

よい患者を育てる『医療の透明性』

先日、日本病院会が2013年度のQI(Quality Indicator: 医療の質を表す指標)プロジェクトの報告資料を公表した。

2013 年度 QI プロジェクト 結果報告 www.hospital.or.jp/pdf/06_20141106_01.pdf

こういった医療の質を比較・公表する姿勢は、もっともっと評価されるべきだ。一般人にはなかなか分かりにくい内容ではあるものの、マスコミなどが騒ぎ立てる「名医」や「スーパードクター」より、よほど大事なことのように思う。

満足度のような定性的な評価だけでなく、周術期の抗生剤管理など、医療の質を評価する項目も多くある。後者はある程度読み手の知識・理解力を問う。このような知識をつけていくためには、一般市民に頑張れ!というだけではなく、このような医療の質の情報が公開される環境を整備することも必要だ。

先日、アメリカの病院の先生の話を聞いたとき、『透明性』という言葉を繰り返していた。病院の透明性向上が、よい病院を作り、よい患者を育てる。そう思う。

上記リンクの資料、内容は盛りだくさんだが、ぜひご覧いただくことをオススメする。

余談だが、患者満足度の比較において、入院患者で満足と答えた人の割合が最大90%超から、最低は10%くらいまで、非常にばらついていた。(設問は「満足、やや満足、どちらともいえない、やや不満、不満」の5段階で回答) 10%しか満足と答えない病院はどこなのだ!?と思ってしまうが、病院名は隠されている。この部分は興味本位で知りたい的な要素が強く、定性的な評価なので病院名を隠してもいいと思う。しかし、脳梗塞の早期リハ実施率のような内容は、病院名を公表しても良いように思う(改善が加速すると思う)。いかがだろうか。

2014/11/14

NHKスペシャル医療ビッグデータ患者を救う大革命

今月はじめに放送されたNHKスペシャル。
医療はデータにより革命を起こすことができると信じている。これまでも番組で紹介されてきたような内容について様々ブログで書いてきた。

論文の話はこちらにイメージ化してある。
IBMが描くコンピュータによる医療 - 医療、福祉に貢献するために

インフルエンザについては様々書いているので、この記事の検索リンクからどうぞ。
インフルエンザ、広げない努力、防ぐ努力 - 医療、福祉に貢献するために

ぜんそくの話題は、同じような情報を分析するシステムを作っている。ブログで書いたのは、クリニックの混雑と天候の関係性を調べたものだ。その着想は持病であるぜんそくが台風接近時にひどくなることからヒントを得ている。(もっと膨大な国のデータを使って分析できれば・・・と思うのだが、そういう機会が民間企業にまで広がってくるのには、もう少し時間がかかりそうだ)
湿度低め、気圧高め、風弱め。三拍子揃ったら、激混み!? - 医療、福祉に貢献するために

済生会熊本の事例では、前立腺がんの摘出術で、データ解析により1週間の早期退院につながったとのこと。おそらく多くの視聴者は「ほぉー」と思ったに違いない。実際、日本の水準で考えると短い。ただ、アメリカでは同じ手術を1泊2日で行うのが多くなってきてる、という情報があったら、この印象は変わったに違いない。

医療はデータによって革新が加速できることを一般市民も知り、その取組に協力することが大事だろう。番組を見て、興味を持ってもらえるとうれしい。
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