医療、福祉に貢献するために

医療、福祉に貢献するために
~ 株式会社メディチュア Blog

2014/05/31

2014/05/30

認知症、かつて何て呼ばれていたか思い出せますか?

今朝の日経に学習障害の話題が出ていた。

学習障害は「学習症」に 精神疾患の新病名 - 47NEWS(よんななニュース)


こういった名称変更は、浸透するまで辛抱強く時間をかけて周知させるくらいしか、やり方はないのかもしれない。

正直、初めて「認知症」を聞いた時、馴染めないなぁと思ったが、今となっては認知症以外ありえないと思ってしまう。元々「痴呆」と読んでいたことはすっかり忘れてしまった。ちなみに日常の用語として「ぼけ」はまだ聞くことがある。

痴呆から認知症に変える話が出てから、もうすでに10年経っているらしい(出所:認知症 - Wikipedia)。冒頭記事の学習症やアルコール使用障害も、10年経てば馴染むのだろう。

以下、余談。障害を症に言い換えたらしい。なのに、「アルコール依存症」は「アルコール使用障害」と、障害に言い換えているのは矛盾しているように思えるのだが・・・

2014/05/29

あべのハルカスを見ながら考える「患者の抱え込み」

病院は便利なところにあるに越したことはない。駅直結、広大な駐車場かつ建物まで歩かない、などなど、理想は尽きない。

しかし、現実問題、すべてを満たすことは困難だ。

市中心部にあった病院が、建替を理由に郊外に移転することで、駅近く・市街地を犠牲にし、広大な駐車場を手に入れた。一方、市街地にあった工場跡地へ病院を移転させ、駅近く・市街地を手に入れた一方で、敷地の広さゆえ、駐車場は狭くなった。そんな事例はたくさんある。

大学病院が駅前にあるケースも多い。何度も通う人にとったら非常にありがたい。でも、逆に言うと、何度も通うことが当たり前になっているケースが多いのだろう。大学病院でしか診れない者以外は、地域の病院・診療所に患者を返すべきなのだが・・・。

あべのハルカスの手前に見える大阪市立大学病院

あべのハルカスの目と鼻の先に大阪市立大学病院がある。通うなら便利なところだ。大阪には土地勘がないのだが、天王寺は様々な路線が混じっていて、交通の便が非常に良い。その駅そばに大学病院がある。

「何度も通う」という現在の常識、いずれ変わるのだろうか。医療制度であれこれ考えるのも大事だが、正直、患者側の意識の問題も大きいように思う。

2014/05/28

弊社レポート meditur insight vol.5 発行いたしました

先日までブログに連載していました虫歯をテーマにした内容をまとめ、さらに、将来予測を加筆したものをmeditur insight vol.5 として発行いたしました。

これまで、DPC制度のあり方や、生殖医療、調剤薬局の未来などを題材に、データ開示による透明性向上や新たな価値創出について述べてまいりましたが、今回の虫歯の話も根底は同じです。

ブログでほとんどの内容は紹介済みですが、最後の章は新たに書いており、その中で歯科医療の将来を考える上で参考にした書籍のご紹介もしております。お時間があるときにお読みいただけると幸いです。


meditur insight vol.5 「虫歯からビッグデータ時代のさらに先を考える」を発行いたしました。 | 株式会社メディチュア

2014/05/27

都道府県間の医療費格差だけでなく、介護にも差がある


医療費抑制目標、都道府県ごとに 政府方針  :日本経済新聞

このニュースが流れ、facebook上では「知らなかった」「何でだろう」などのコメントが見られた。日本の医療費は、西高東低で、医師の数とベッドの数と強い相関がある。自治体などを回るときは、これらのグラフを携えて、話を切り出す事が多い。

健康保険組合などにも取り組みを促している。これは「データヘルス計画」として、話が進んでいる(以前ブログに書いた内容は以下を参照)


上述のとおり、医療費には格差がある。これは介護もである。

65歳以上人口1人あたりの介護給付費
出所: 国立社会保障・人口問題研究所 人口統計(2010年)、厚生労働省 介護給付費実態調査(2013年6月)を基に弊社が作成
介護は九州・四国・日本海側が高く、太平洋側が低い。費用が高い県は介護が充実していると捉えることができる反面、財政負担が大きいとも言える。どうすべきか。目標(あるべき姿)がなければ、どうにもならないだろう。

医療は当たり前の方針を決定したまでだが、非常に大事なことだ。

2014/05/26

書評: MBA流ケースメソッドで学ぶ 医療経営入門

今月はセミナー講師系の仕事をさせていただくことが多く、すでに5回ほど機会があった。こちらから一方的に話す形式は、1回90分程度の時間、受講者が徐々に飽きてしまうリスクが高くなる。

そこで、グループディスカッションの形式を頻繁に取り入れている。ディスカッションでは、積極的に発言を促すため、より身近なテーマを設定する配慮や、相手の発言自体を否定しない等のルールを決めている。

そうは言っても、受け身の受講者が、突如として積極的な姿勢に変わることはまず少ない。なので、大抵は、Yes / No の質問であったり、全員起立で徐々に座らせる質問など、様々な趣向を凝らしている。

今月はケースメソッドを取り入れてみた。積極的に発言を促してみても、空振りに終わる懸念があったため、教室全体での討議は避け、チーム討議を中心にしてみたところ、思った以上に活発な議論がなされたようで、ほっとした。

ちなみに、その講義で用いたケースは自分のこれまでの経験をほぼそのまま書いたものだ。なるべく最新のトピックになるよう配慮もした。

今月頭に出た写真の書籍。ケースメソッドの良さが非常に感じられる内容となっている。本来は書籍で読むのではなく、討議の場を経験するのがベストだが、十分、魅力が伝わってくる。この本は、単に読むのではなく、考えることが重要だろう。今更だが、この本を読んでから講義をすれば良かった(4月末にポチッと購入していたのに・・・)。

2014/05/25

こういう本を待っていた(書評: 「抗がん剤は効かない」の罪)

売れに売れたらしい。


反論本もたくさん出た。代表的なものは買って読んだつもりだ。
 
内容はどれも理解できるのだけど、患者の「わらにもすがりたい」心境のときでは、どれを読んでも不安は解消されないのでは、というもやもやが残っていた。

で、科学的な事実を淡々と書いている本が、これだ。


『「抗がん剤は効かない」の罪』というタイトルは練りに練ったのではないだろうか。抗がん剤は、効く人もいれば、効かない人もいる。その事実を感情を込めず、客観的な事実だけを述べると、医者じゃない人は「ほとんど効かない」「大して効果はない」「たまに効く人もいるんだ」といった程度になるだろう。それをセンセーショナルに書いたのが、冒頭の近藤氏の著作であり、患者は熱狂的に支持した。

食べログの評価でいったら、☆2つみたいな抗がん剤。☆5つと付けた人1人に対し、☆1つが5人いるような状況だ。でもこれを「効かない」と言ってしまったら、もう医療の進歩はない。☆5つがいることも事実で、このベネフィットが、リスク以上に価値あるものだとしたら、抗がん剤は無駄ではない。

そして、本書の中でも触れているが、ベネフィットもリスクも、医学的な検証がなされて、保険収載されている(なお、十分検証されていないものもあり、痛烈に批判している)。とはいえ、患者個人個人の価値観は千差万別であるから、ベネフィットの捉え方もリスクの捉え方も人によって違うという前提に立ち、どのような治療をすべきか、医師と患者で考えるべきだと主張している。

正直、この本に、一般人がぐぐっと惹き付けられ、ベストセラーになる要素は少ない気がする。ただ、一番読んでもらいたい本であることは間違いない。

医療者は☆2つの抗がん剤を患者に勧めている(☆5つもいれば、☆1つもいる)。という事実を、医者も患者も理解すべきだ。でないと、近藤氏の本はバカ売れしつづけるだろう。


ちなみに、本書、ベンツのタクシーの一節は、非常に分かりやすく、奥が深い。

2014/05/24

#7119や#8000の認知度向上、ちりもつもれば・・・

こんなニュースが流れていた。以前、ブログで書いた#7119(#7119 - 医療、福祉に貢献するために)。ニュースタイトルでは「大人版#8000」となっているが、こども版についてもブログで書いている⇒#8000 - 医療、福祉に貢献するために

大人版「♯8000」導入で軽症の受診抑制- 埼玉県、10月から救急電話相談開始 | 医療介護CBニュース

やはりこういった取り組みは重要だろう。背景には、埼玉県の医師不足や、大きなきっかけのひとつであろう下記のトピックが挙げられる。
救急搬送36回断られたニュースを聞いて、何を思うか - 医療、福祉に貢献するために

埼玉県も、医療者だけで考えてもダメだ、と気がついたらしい。県民目線で医療のあり方を考える会議を始めた。
埼玉県医療を考えるとことん会議を開催します 県民目線で医療のあり方を考え、県・県医師会・医療機関・県民等に提言します - 埼玉県ホームページ
この取り組み、非常に良いと思う。他の都道府県でも真似したらよい。この会議の内容を伝えた記事(救急部が迷惑がられる理由、“県民”に説明 | 医療経営CBnewsマネジメント)を読むと、川越救急クリニックの院長が「県民の理解が欠かせない」と話されたようだ。県民目線で考えるというのは、県民の要望だけを伝えるのではなく、県民の努力余地を自らが考えなければならない、ということだろう。

その努力余地のひとつが、#7119や#8000だ。タイトル、ちりもつもれば・・・と書いたけど、「ちり」じゃないな。日本語力のなさを痛感。

2014/05/23

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第10回、最終回)

これまで、虫歯の未処置歯のあるものを減らすためにはどういった取り組みが有用か検討するため、ひとり親世帯の比率や収入、学力や進学率といった仮説から、ハム・ぶどうといった仮説とは呼べないようなものまで、検証してきた。

しかし、所詮は都道府県単位で平均化されたデータだ。本当であれば、個人個人の虫歯有無に対し、家庭事情、好き嫌い、様々な物の購買データ、学歴、行動習慣等の情報をぶつけ、関係性を調査すべきだ。サンプル調査ではなく全量調査。平均データではなく全データ。これがビッグデータ時代の分析だろう。

行動習慣のデータ化、ディープダイブ

歯磨き回数が虫歯のあるものの割合を減らしている話があった。歯磨き自体の上手下手をデータ化することもできるだろう。実際、電動歯ブラシでは磨き方のくせなどを評価してくれる製品もある。

プラチナ・ブラック 7000 |電動歯ブラシ【ブラウンオーラルB】
'Smart' toothbrush grades your brushing habits - CNN.com

磨き方だけでなく、歯磨きの時間から生活習慣などもデータ化されたり、唾液成分から食べた内容を把握したり、様々な情報を取得できるのは、もう夢物語でもなんでもない。現実の話だ。これらのデータから個々人を理解したスモールデータ(ディープデータ)を作り出し、虫歯を減らす策を考えることで、これまでとは全く違う情報が見えてくるかもしれない。このスモールデータを作ることの価値が高まるに違いない。逆に「ビッグデータを扱える」というだけでは価値が下がるだろう。


ビッグデータ、スモールデータ、スマートデータ。様々な用語が流行りの言葉として良く聞くようになった(自分が踊らされている一人でもあることは否定しない)。データを生み出すことの価値、組み合わせることの価値、スモールデータにする(ディープダイブする)価値。様々な価値に注目が集まる中で、基本的な統計や分析の知識・理解は重要だろう。虫歯を例に、実際に分析事例を織り交ぜながら、ビッグデータ時代の基本的なところを見つめなおしてみた。

最後だが、歯磨きは大事、ということだ。


歯と口は 健康・元気の 源だ
平成26年度 歯と口の健康週間実施要領(http://www.jda.or.jp/poster/pdf/eiseishukan_h26.pdfより 



こどもの虫歯から、相関と因果を考える(全10回)

2014/05/22

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第9回)

因果関係の仮説を立て、相関関係を検証する。これが長い間行われてきた分析・調査の基本だ。しかし、現在は、ちょっとした計算ならEXCELで十分検証できるし、膨大なデータであっても一瞬で処理できるようになってしまった。

このような技術の進展は、仮説→検証という流れを変えようとしている。膨大なデータから相関関係から見出し、それから因果関係を検討するということも可能になってしまった。おむつとビール(おむつ ビール - Google 検索)が話題でよく出る。ただ、「何でもかんでも分析すればいい、出てきた結果は興味深い」といった盲目的な勘違いしないためには、下記アクセンチュアの工藤氏の記事を読むのがおススメだ。

データ分析プロジェクトの成否を分けるのは「目的意識」と「課題認識」---アクセンチュア 経営コンサルティング本部 アクセンチュア アナリティクス 日本統括 工藤 卓哉氏 アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 シニア・マネジャー 保科 学世氏:ITpro

同じようなことを理解する上では、下の書籍も参考になる。


では、これらの話を基に、壮大な・・・・と話を広げたいところだが、こじんまりと、都道府県別の未処置歯のあるものの割合と、600以上の様々な項目の1人あたりの支出金額との関係性を調べた。

未処置歯の多い都道府県ほど支出金額が多い項目TOP5

項目
相関係数
p値
ぶどう 0.420 0.0033
他の加工肉 0.415 0.0037
航空運賃 0.390 0.0067
干ししいたけ 0.380 0.0084
かつお節・削り節 0.323 0.0268


未処置歯の少ない都道府県ほど支出金額が多い項目TOP5

項目
相関係数
p値
教養娯楽賃借料 -0.488 0.0005
他の主食的調理食品 -0.488 0.0005
れんこん -0.457 0.0012
パン -0.446 0.0017
ハム -0.446 0.0017

ぶどうをたくさん買っている都道府県ほど未処置歯が多く、教養娯楽賃借料(CD、DVD等のレンタル料、スキー・スケート靴・ボウリング靴等のレンタル料)が多いほど未処置歯が少ない。



試しにぶどうとハムをグラフにしてみた。

どうだろう? 意味があるだろうか。何か因果はあるだろうか。正直、おむつとビールに近いように感じたのではないだろうか。(ここで、前述の本や工藤氏の対談を読み返すべき)

相関から因果を考えることができるようになったというためには、都道府県単位の数値分析ではなく、世帯別データや、個人別データが必要かもしれない。これが世の言うところのビッグデータなのではないだろうか。統計分析を行うときに、因果を考えずにスモールなデータを相手に相関が・・・といったところで、そこから生み出される価値は少ない。であれば、従来の仮説検証をしている方がよっぽど説得力がある。でもビッグなデータならば、本当に価値があるかもしれない。

次回(第10回、最終回)では、ビッグデータの価値創出、ディープデータ(スモールデータ)、スマートデータについて触れてみたい。

2014/05/21

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第8回)

第7回までに、虫歯の都道府県格差から、さらに虫歯を減らすための施策を考えてきた。

高校卒業時の進学率と未治療歯のある者の割合との関係性
出所: 総務省統計局 日本の統計 2014、 文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

出所:平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

教育的な側面が大きいのでは、ということを裏付けるデータとして、上記の進学率やひとり親世帯の比率などと、虫歯未処置者割合の関係を示してきた。

しかし、これは単なる偶然ではないのか?


例えば、下のグラフのように、相関係数は非常に高いケースがあったとする。しかし、これは偶然と思われても仕方ない。
相関は非常に高いグラフ例

そこで、これらの相関について信頼性があるか確認・・・といってもこの辺りの説明は、専門家に任せた方がよいので、以下のサイトなどをご覧頂きたい。


結論として、p値は以下のようになった。

 高校卒業時の進学率 : 0.0006
 ひとり親世帯の比率  : 0.0011
 相関ほぼ1のグラフ例 : 0.0512

細かい説明を省略すると、高校卒業時の進学率やひとり親世帯の比率と、虫歯の関係性は、信頼できる高い相関があったと考えられる。(相関係数がほぼ1のグラフはあまり信頼性が高くない)

相関だ何だといいながら、ここまで様々なデータから施策を考えてきてみた。しかし実はここまでの流れは前時代的な検討方法だ。(8回もブログの記事にしておいて、何だ!!ということは忘れていただき)次回と次々回で、これからの分析に関する考え方の一端を紹介したい。

2014/05/20

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第7回)

前回(第6回)は、時系列で見た時に「ひとり親世帯が増えると虫歯が減った」という分析結果と、都道府県間のばらつきを見た時に「ひとり親世帯比率が高いと虫歯が多い」という分析結果を示し、ありがちな落とし穴にはまってみた。

では、なぜ時系列で見た時に、虫歯が減っていたのだろうか。

日本口腔衛生学会の政策表明から、その検証内容のサマリーを引用する。
わが国全体におけるう蝕減少の要因 
(1)フッ化物利用による影響が強く,特にフッ化物配合歯磨剤は大きな要因である.フッ化物歯面
塗布は乳歯う蝕減少に寄与している可能性がある.フッ化物洗口は地域的には強い影響が考えられるものの全国的には普及度が低いため影響はさほど強くない.
(2)シーラントは,わが国における永久歯う蝕減少の主要な要因の一つである.
(3)砂糖摂取は明らかなう蝕のリスクファクターであるものの,わが国のう蝕減少寄与度は限定的である.
(4)哺乳は,乳歯う蝕のリスクファクターであるものの,わが国の乳歯う蝕減少への寄与度は明らかではない.
(5)歯口清掃は歯磨き回数の増加がフッ化物配合歯磨剤のう蝕予防効果を高めた可能性がある. 
出所:政策表明 う蝕のない社会の実現に向けて 日本口腔衛生学会誌 J Dent Hlth 63(5), 2013 

つまり、フッ化物利用(特にフッ化物配合歯磨剤)、シーラント、歯磨き回数の増加、が大きな理由とある。年々、減少していたのは、ひとり親世帯の与える影響よりも、フッ化物利用等の影響の方が大きかったとかんがえるのが自然だろう。(下のグラフに、各取り組み実施率の推移を示す)


各種う蝕予防対策の実施率の推移
出所:
政策表明 う蝕のない社会の実現に向けて 日本口腔衛生学会誌 J Dent Hlth 63(5), 2013

そこで、さらに疑問が湧くはずだ。フッ化物利用、特に地域間格差の生じている塗布・洗口は、虫歯のあるものの割合の都道府県間の差異に影響を与えていないか、気になるところだ。これを検証するため、平成 16 年度厚生労働科学研究 「フッ化物応用による歯科疾患の予防技術評価に関する総合的研究」研究班の報告資料にある都道府県別のフッ素塗布事業実施の有無(市区町村割合)から、未処置歯のある者割合との関係性を見てみた。

出所: 厚生労働科学研究 地方自治体におけるフッ化物利用に関する全国実態調査報告書(平成 16 年度)文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成
このグラフでは、調査に回答した都道府県について、その関係性を見てみたところ、特に明確な傾向があるような結果は得られなかった。この都道府県別のフッ素塗布市区町村割合との相関を見ただけで、フッ素塗布の効果がない、と結論づけるのは乱暴過ぎる。複雑な要因が重なっている事象を1つの切り口だけで判断するのは非常に危険である。

そこで、学術的な考え方を参照すると、前述の日本口腔衛生学会の政策表明において、コクランレビュー※などを引用し、フッ化物利用の有効性について、説明がなされている。

※Marinho VC, Higgins JP, Logan S et al.: Fluoride gels for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database Syst Rev. 2002;(2):CD002280.

これらのことから、時系列的な未処置歯のある者割合の低下は、歯磨き粉・塗布・洗口等のフッ化物利用や歯磨き回数の増加などが大きく寄与していると理解できる一方で、現時点において都道府県格差が生じているのは、フッ化物利用の差異などが原因かどうかを明確にできるだけのエビデンスはなかった、と整理できよう。

では、以前のデータ分析結果から見えてきた結果は、単なる偶然だったのか、偶然を偶然にしないためには何をしたらいいのか、次回以降で整理したい。

2014/05/19

漫画でセルフメディケーションを推進

ココカラファインのニュースリリース(http://www.cocokarafine.co.jp/news/pdf/20140401_PR01.pdf)に小学生向け教育図書の制作に全面協力したという話題が出ていた。

肝心の書籍は、書店で販売されるものではなく、小学校や公立図書館に寄贈されるものとのことで、読むことはできないかなぁ・・・と思っていたが、さっそく地元の図書館で借りることができた。

借りてきた本

ドラッグストアはまだしも、「調剤」って、なかなか興味を持ちづらい内容ではないだろうか。それなのに「ひみつ」って・・・。

中はこんな感じ。漢字にふりがながふってあり、読みやすい
で、大の大人が読んだ感想としては、ドラッグストアの宣伝・押し付け感が強いものの、薬剤師や管理栄養士など働く人たちの業務がわかったり、医療機関受診・処方箋発行・調剤・処方の流れ・仕組みなどが簡単に理解できるように説明されていたり、良い部分も多くあった。

まずは薬局・ドラッグストアという流れは、セルフメディケーションを進める上で、大事な方向性だと思う。そして、大前提となるのは、患者のリテラシー向上だろう。この本は子どものときから、リテラシー向上のきっかけとなるのではないだろうか。

繰り返しになるが、この本、市販はされていない。読みたい人は図書館へ。

2014/05/16

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第6回)

前回、第5回で落ちてしまった落とし穴は、下の2つのグラフの解釈だ。
出所:平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成
出所:平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

都道府県別に見た虫歯(未処置歯)のある割合はひとり親世帯の比率と相関性があると見た一方で、下のグラフのように未処置歯のある割合が年々減少しているのに母子・父子世帯数は増えている、という一見矛盾している2つの事象だ。

ここで考えるべき点は、「相関があるからといって、因果があるか」ということだ。

ここからは、頭の体操になってくるが、下の喫煙率と肺がんの話にエッセンスが詰め込まれている。

《18》 喫煙率が下がっているのに肺がんが増えている? - 内科医・酒井健司の医心電信 - アピタル(医療・健康)

この記事の中で引用されているJTのウェブサイトでは、喫煙と肺がんは関係ない、と主張しているようにも受け取れかねない内容だ。しかし、記事でも論じられているとおり、喫煙者と非喫煙者の群でそれぞれ評価しないと判断できない。JTの理論は暴論といっても過言ではない(JTの事業内容ゆえ致し方ない主張と理解すべきか)。

同じことが、今回の虫歯にも言える。時系列データである虫歯の減少について、母子・父子世帯の増加だけが因果であるというような認識の仕方は危ない。この20数年間には、社会的な変化や、医療技術の変化、様々な環境の変化が生じている。それらの話に一切触れず、特定の事象を取り上げ、相関関係から、因果に結びつけることはかなり危険だ。

では、最初のグラフに戻って、都道府県格差はなぜ生じているのか考えよう。仮に医療技術の展開状況も含めた社会環境が全国同一とするならば、ひとり親世帯の影響は、要因のひとつと考えても良いかもしれない。そこで必要になってくるのが、虫歯を減らすことに貢献している社会環境に関する分析だ(バイアスの評価)。次回、この点について、考えてみたい。

2014/05/15

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第5回)

虫歯の人を減らす取り組みは「低所得世帯・ひとり親世帯に積極的な支援策を展開すべき」ではないだろうか、ということを前回までにデータを示しながら考えてきた。

そこで、この内容を上司なり、クライアントなりに、報告したと仮定しよう。すると、突然、聞いていた上司・クライアントが放つ素朴な疑問に焦ることになる。


「ひとり親世帯って、最近増えてきているのでは? それなのに虫歯の人は減っているんだから、矛盾してない??」


確かに虫歯のある人は減ってきている。昭和50年台から年々減少していることは下のグラフから明らかだ。
虫歯のある者割合の年次推移(小学生)
出所:文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成


では母子世帯・父子世帯(国勢調査でいうところの母子世帯・父子世帯は「未婚,死別又は離別の女親(男親)と,その未婚の20歳未満の子供のみから成る一般世帯」のこと)の推移と、未処置歯のあるものの割合の推移をそれぞれ左右の軸にとり、一緒にグラフにしてみた。


「確かに矛盾してました!! 母子・父子世帯が増えると虫歯は減ります!!」


出所: 平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成
このグラフだけ見て、解釈を誤れば、上司・クライアントが矛盾を指摘したとおり、母子・父子世帯が増えると虫歯が減る、と結論付けたくなる。しかし、これは危険だ。

なぜ危険なのか。分析の落とし穴に落ちてしまった点について、次回(第6回)で考えてみよう。

2014/05/14

駅構内の広告

病院の広告、様々なところで見かける。駅のホームにある広告は、場合によっては過半数が医療系だったりする。変わったところでは、名古屋駅の新幹線ホームから降りる階段には、東京のクリニックの広告があったように記憶している。

仙台駅の改札前で見た広告。



JR仙台病院が広告なんて出しているんだ!!と思って、焦りながらも写真を撮った(液晶画面で次々広告が入れ替わるやつ)。


画面が切り替わったら診療科や診療時間、アクセス案内まで出てきた。

JR仙台病院、200床に満たない病院なのに広告を出して頑張っているのか、と感慨深く眺めていたけど、ここはJR仙台駅だった。(JRだから広告費はタダなのだろうか?)

ちなみに感慨深い理由は、JR仙台病院に仕事に来たわけではなく、学生の頃、現在の院長先生と研究をさせていただいていたから(もうだいぶ昔のことだが共著者に並べてもらっている論文もある⇒血管壁組織性状の超音波診断を目指 して Neurosonology 14(2) : 42-46, 2001)。実験を先輩・後輩と繰り返していた頃が懐かしい。

2014/05/13

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第4回)

前回、仮説3の「親のしつけが虫歯に悪影響を及ぼしているのでは」について検証してきた。ただ、ここでいう『しつけ』とは一体何なのだろうか。客観的に評価できる指標は無いか考えた結果、前回の検証項目「高校卒業時の進学率」にたどり着いた。

しかし、これだけで結論付けるのは危うい。他にも考えられないか。そこで、収入(現金給与額)、学力(全国学力テスト。ただし、これは子どもの学力であって、直接は関係ないかも)、ひとり親世帯比率、の3つの追加指標との相関を調べてみた。

出所:平成25年賃金構造基本統計調査、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

出所:平成25年度 全国学力・学習状況調査 調査結果資料、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

出所:平成22年国勢調査人口等基本集計(総務省統計局)、
文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成
その結果、収入、ひとり親世帯比率との相関性は高いことが分かった。収入が低いほど虫歯は多く、ひとり親世帯比率が高いほど虫歯は多くなっている。

ここまでで結論付けるのであれば、「低所得・ひとり親世帯では虫歯の未治療者の比率が高い。ひとり親世帯・低所得世帯へ積極的な支援策などを検討すべき」で説得力は十分あるだろう。そして、「歯科医師数を増やす」、「お菓子に税金を課す」といった対策は、虫歯を減らすことにあまり効果は期待できないことも併せて説明できるだろう。(相関係数のp値については、別の機会にしようと思う)

次回は時系列データによる分析切り口から、分析の落とし穴に落ちてみる。

2014/05/12

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第3回)

仮説3: 親のしつけの問題では(仕組みがうまくいっていない)


高校卒業時の進学率と未治療歯のある者の割合との関係性
出所: 総務省統計局 日本の統計 2014、 文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

高校卒業時の進学率と未治療歯のある者の割合との関係性には、それなりの相関性が見られる。負の相関であるため、進学率が高いほど虫歯が少ないことを意味している。

高等教育を受けていることが、短絡的に親のしつけが良いとできるか疑問は残るものの、関係性があることが分かった。

仮説1~3を検証した結果、仮説3が一番相関性が強いため、少し深堀りしていく。深堀りしないことには、「高校卒業時に大学へ進学させよう!」というような???な対策案を展開しかねない。このままでは真因が見えてこない。


そこで、今回は高校卒業時の進学率で相関性を調べたが、そもそもしつけを問題にするのであれば、他にも、親の所得、出生率、ひとり親世帯比率など、家庭環境を表しているような項目を調べるべきだ。 ⇒関連項目に関する相関性の調査(次回、第4回で検証予定)

また、親のしつけが原因という仮説を支持するのであれば、都道府県間の格差もあるが、時系列的な検証ができないだろうか。絶対に虫歯にならない特殊治療が発見された等の革命的な医療技術の進歩がないのであれば、今の沖縄は20年前の東京と同じだ、と言う風に考えることができる。⇒時系列データによる相関性の調査(次々回、第5回で検証予定)

2014/05/09

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第2回)

まず、仮説を考える前に、課題を明確にしておこう。

課題: 虫歯のある子どもの割合が高いこと

課題の原因、なぜ虫歯のある子どもの割合が高いのか考えることで、どういった取り組みをすれば、虫歯のある子どもが減るか。原因が分かれば、より効果的な施策が展開できる。

さて、仮説を考えてみよう。思いつきで3つ挙げた。

仮説1: 甘い物、お菓子が大好きだから、虫歯が多くなってしまう(原因が多い)
仮説2: 歯医者の数が少ないから、虫歯が放置されてしまう(対策が十分でない)
仮説3: 親のしつけの問題では(仕組みがうまくいっていない)

「虫歯」という事象に対し、原因、対策、仕組み、という3つのアプローチに整理した。仮説1は、虫歯を作る原因がなければ、そもそも虫歯にならないはず、と考えている。仮説2は、歯医者が多ければ、仮に虫歯になっても治療されるはず、とした。仮説3は、虫歯が悪いこと・いけないこと、というようなしつけのレベル、そもそもの仕組みが原因ではないか、と考えた。

仮説1は、お菓子としたが、チョコレートの方がいいかもしれないし、清涼飲料水の方がいいかもしれないが、細かなことは分からないので、お菓子とした。また、仮説2は、歯医者の数よりも、歯科検診の実施状況などが大事なのでは?という考え方もあるが、学校で歯科検診が毎年なされていることを考慮し、仮説には入れなかった。

要は、挙げれば、きりがないかもしれないが、これが重要な要素なのでは?というものを、主観により、3つの観点についてそれぞれ1つずつ挙げた。

では、ビッグデータ時代であっても、従来からの色褪せない手法で、上記3つの仮説を検証してこう。(※本シリーズでは簡易な分析で考え方を示すため、EXCELを使った手法で説明する)

仮説1: 甘い物、お菓子が大好きだから、虫歯が多くなってしまう(原因が多い)



菓子類 世帯支出金額と未治療歯のある者(12歳)の割合との関係性
出所: 家計調査 2014年3月次、文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

世帯あたりの支出金額との関係性を見ると、ほとんど相関が見られない。これでは「お菓子をたくさん食べているから虫歯になるんだよ」と言ったところで、誰も納得してくれないだろう。



仮説2: 歯医者の数が少ないから、虫歯が放置されてしまう(対策が十分でない)



歯科医師数と未治療歯のある者(12歳)の割合との関係性
出所: 平成24年(2012年)医師・歯科医師・薬剤師調査文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

人口10万人あたりの歯科医師数との関係性では、負の相関(歯科医が多いと虫歯が少ない)が少しあるように見受けられる。強い相関ではないものの、都道府県別のざくっとしたレベルでも多少傾向が見えることから、統計的な検証を無視して、とりあえずの報告レベルならば、聞く人も「へぇー」となるかもしれない。でも、じゃ、市町村別でも同じことが言える?とか、歯科クリニックの数は関係ないの?といった関連する質問が飛び交うに違いない。


仮説3: 親のしつけの問題では(仕組みがうまくいっていない)

仮説3は少々乱暴かもしれないが、『親のしつけ』を定量的に評価できる項目が見当たらないので、親の学歴(高校での進学率)で比較してみることにした。この仮説3の検証と、3つの仮説検証の結果から考えられることについては、次回、紹介したい。(第3回に続く)

2014/05/08

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第1回)

恥ずかしながら歯の状態はあまり良くない(良くなかった、と言った方が適切か。最近は定期的にケアしてもらっているお陰で、少しはマシになったはず)。

最近の子供達は虫歯が減っているらしい。減ったのには諸説あるらしいが、現在でも地域間格差が大きいというのは、下のグラフのとおりだ。

都道府県別 12歳の虫歯状況(クリックすると拡大します)
出所: 文部科学省 学校保健統計調査(平成25年)を基に作成

そこで、今回から数回にかけて、このデータを基に、相関と因果を考えてみたい。

上の図と同じ内容を未処置歯のある者割合順に都道府県を並び替えたもの

沖縄は最も虫歯が多い。温暖だからか?? いや北海道も多いぞ。寒すぎてもダメか?? 岐阜には名医がいるのか?? などなど、これだけでも様々な情報が見えてくるものの、単なる想像であり、意味はない。2回目では、ビッグデータ時代以前の一般的な分析方法であった、仮説を立て、検証する流れで、虫歯に切り込んでみる。
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