2014/05/22

こどもの虫歯から、相関と因果を考える(第9回)

因果関係の仮説を立て、相関関係を検証する。これが長い間行われてきた分析・調査の基本だ。しかし、現在は、ちょっとした計算ならEXCELで十分検証できるし、膨大なデータであっても一瞬で処理できるようになってしまった。

このような技術の進展は、仮説→検証という流れを変えようとしている。膨大なデータから相関関係から見出し、それから因果関係を検討するということも可能になってしまった。おむつとビール(おむつ ビール - Google 検索)が話題でよく出る。ただ、「何でもかんでも分析すればいい、出てきた結果は興味深い」といった盲目的な勘違いしないためには、下記アクセンチュアの工藤氏の記事を読むのがおススメだ。

データ分析プロジェクトの成否を分けるのは「目的意識」と「課題認識」---アクセンチュア 経営コンサルティング本部 アクセンチュア アナリティクス 日本統括 工藤 卓哉氏 アクセンチュア テクノロジー コンサルティング本部 シニア・マネジャー 保科 学世氏:ITpro

同じようなことを理解する上では、下の書籍も参考になる。


では、これらの話を基に、壮大な・・・・と話を広げたいところだが、こじんまりと、都道府県別の未処置歯のあるものの割合と、600以上の様々な項目の1人あたりの支出金額との関係性を調べた。

未処置歯の多い都道府県ほど支出金額が多い項目TOP5

項目
相関係数
p値
ぶどう 0.420 0.0033
他の加工肉 0.415 0.0037
航空運賃 0.390 0.0067
干ししいたけ 0.380 0.0084
かつお節・削り節 0.323 0.0268


未処置歯の少ない都道府県ほど支出金額が多い項目TOP5

項目
相関係数
p値
教養娯楽賃借料 -0.488 0.0005
他の主食的調理食品 -0.488 0.0005
れんこん -0.457 0.0012
パン -0.446 0.0017
ハム -0.446 0.0017

ぶどうをたくさん買っている都道府県ほど未処置歯が多く、教養娯楽賃借料(CD、DVD等のレンタル料、スキー・スケート靴・ボウリング靴等のレンタル料)が多いほど未処置歯が少ない。



試しにぶどうとハムをグラフにしてみた。

どうだろう? 意味があるだろうか。何か因果はあるだろうか。正直、おむつとビールに近いように感じたのではないだろうか。(ここで、前述の本や工藤氏の対談を読み返すべき)

相関から因果を考えることができるようになったというためには、都道府県単位の数値分析ではなく、世帯別データや、個人別データが必要かもしれない。これが世の言うところのビッグデータなのではないだろうか。統計分析を行うときに、因果を考えずにスモールなデータを相手に相関が・・・といったところで、そこから生み出される価値は少ない。であれば、従来の仮説検証をしている方がよっぽど説得力がある。でもビッグなデータならば、本当に価値があるかもしれない。

次回(第10回、最終回)では、ビッグデータの価値創出、ディープデータ(スモールデータ)、スマートデータについて触れてみたい。