2015/04/08

『医者の帰りに薬局に寄る』 このシステムが続く限り、医薬分業は非効率

医薬分業の議論が熱い。

門前薬局の乱立が問題視され、医薬分業の経済合理性までもが否定され、門内薬局はおろか、病院とは別経営母体の院内薬局まで可能性が議論され始めた。

議論の一例で、Yahoo!ニュースに掲載された産経新聞の記事。コメント欄が興味深い。(2016/09/09 Yahoo!ニュースの記事が参照できないため、産経新聞の記事へのリンク掲載に修正)


医薬分業「院内薬局」規制をめぐる議論 患者の利便性VS「分業」効果 (産経新聞)のコメント一覧 - Yahoo!ニュース

結論から言えば、薬局の現状に対する批判の嵐だ。これまで弊社でもレポートで、こういった問題点を指摘してきた。

なぜ、医薬分業が批判されているか。それは『医者の帰りに薬局に寄る』からだ。調剤薬局に行く多くの顧客は、病院・クリニックで処方せんをもらい、帰りに薬局に寄る。診断・治療を受けたのち、門前薬局に寄る。そこでは、流れ作業のように質問を受け、薬を受け取る。

本来であれば、かかりつけ薬局で、親身になって相談してもらうところだろうが、病院・クリニックごとの門前薬局で済ます患者が多いのが現状だ。


医薬分業が進まない根本的な原因は、医者にかかるのはフリーアクセスであり、回数の制限もないことが挙げられる。すべて医者に聞けば良いのだ。病院・クリニックでは「現在服用中の薬はありませんか?」と聞かれる。患者は、医者が何かしらチェックしてくれている、気にかけてくれている、と思うはずであり、「薬局は同じことを聞かれる面倒なところ」という認識である(これはYahoo!のコメントでも明らか)。

では、どうすれば、医薬分業が価値を発揮し、門内薬局等の議論が終息するか考えてみたい。


それは、医者にかかる回数を制限し、リフィル処方を認めることだ。リフィル処方になれば、医者の帰りに薬局に寄る、という行動パターンは少なくなる。そして、まずは薬剤師の元へ、という基本行動パターンが生まれる。

昨日のロサンゼルスタイムスの記事が興味深い。

Pharmacists try a more personal approach to treatment - LA Times
象徴的な一文を引用した。
Patients usually see their pharmacists once a month, while they see their primary-care doctors a few times a year. And pharmacist visits are typically longer, lasting up to an hour.  
患者は1ヶ月に1度薬剤師に会う一方で、かかりつけ医に診てもらうのは年数回だ。薬剤師の面会は通常1時間以上におよぶ(弊社意訳)
かかりつけ薬局の意味が日本とまったく違う。面薬局も、結局、「便利薬局」であり、医者の帰りに寄ることには変わりない。これでは、いつまで経っても、本質的な医薬分業は進まないかもしれない。

薬剤師がゲートキーパーになろうと思ったら、医師がやっている権限を薬剤師に移さなければならない。それがリフィル処方だ。いずれにせよ、『医者の帰りに寄る』ではなく、調剤薬局にまず行く行動パターンを作らなければ、なし崩し的に門内薬局の開設へ大きく動くことになるだろう。

そうなれば、門内に薬局があるのだから、実質競争のない環境であり、薬局が利益を上げることに対し、今まで以上に世間は非常に厳しい見方をするようになるだろう。

『医者の帰りに薬局に寄る』、この行動パターン、そろそろ考えなおすべきなのではないだろうか。


弊社レポートは下記からどうぞ
Our Reports | 株式会社メディチュア (「Vol.2 調剤薬局の課題と未来」のPDFマークをクリックするとダウンロード可能)

いっそ、医薬同業になるのなら・・・という仮定での話はこちら