2015/10/16

Virtual Ward(仮想病棟)の入退院マネジメントはリアルな病棟そのもの

先月、Virtual Wardについて紹介した。

Virtual Ward(仮想病棟)の可能性 - 医療、福祉に貢献するために

今回は、Devon Predictive Modelに関するレポート(South Devon and Torbay | The King's Fund)から、その入退院マネジメントについて紹介したい。(リスクレポートの中身や、病棟でどのようなケアが行われるかは別の機会に・・・)

入退院マネジメントは次のStep.1から6までになっている。

Step 1: 予測リスクレポートの作成

毎月リスクレポートを作成する。すでに仮想病棟に入院している患者も「ハイリスク」として分類する。病棟コーディネーターらはウェブサイト上でこのレポートを見ることができ、関係者との情報共有がなされる

Step 2: 仮想病棟ミーティングの対象患者抽出

仮想病棟ミーティングの前に、プライマリーケア医やプラクティスナースは仮想病棟コーディネーターと会い、リスクレポートや仮想病棟入院候補者リストについて討議する。仮想病棟コーディネーターは、プライマリーケアシステムの電子情報から、患者ごとのフィジカル・メンタル状態などのバックグラウンドの情報などを得ることもできる。

Step 3: 仮想病棟ミーティングの実施

仮想病棟チームは月1回、病棟患者のステータスをレビューする。患者は赤・黄・緑の信号機の色で管理されている。また、リスクレポートから、新規入院患者の状況を討議する

Step 4: 患者評価

仮想病棟への新規入院が決定した患者は、ケースマネージャが割り当てられる。
ケースマネージャは、仮想病棟の他の医療スタッフが分からないことがあれば、何でも応えられるようにしている。ケースマネージャは、患者の病態、精神的な状況、家族環境や、個人の要望・願望などまで把握する。

Step 5: 積極的な多職種介入、患者管理の継続

ある患者は電話でのコミュニケーションで良いが、ある患者は対面が望ましいかもしれない。
患者ごとの病態や家庭環境などに応じ、介入の内容はテーラーメイドで対応している

Step 6: レビューと仮想病棟からの退院検討

仮想病棟の患者は信号機の色でステータス管理され、仮想病棟のベッドコントロールがなされる。
仮想病棟からの退院が決まった患者は、”外来患者”(そもそもは病院に入院していない外来患者だが、仮想病棟から退院した外来患者という意味)に戻る


これらのステップはまさに通常の病棟運営と同じと言えるのではないだろうか。あくまでも仮想病棟であり、患者は物理的に病院に入院するわけではない。しかしながら、仮想病棟の中で病態のみならず、家庭環境や精神面まで情報把握し、積極的に多職種が介入している点は非常に興味深い。


日本でもすでに似た取り組みが

先月からVirtual Wardについて調べているのだが、似た取り組みは日本でも見られる。ある病院では、外来患者について、入院するリスクを評価し、積極的な介入を行っているとのこと。この病院では、外来看護師が率先して動いていた。また、この病院のリアルな入院病棟では、再入院を防ぐ取り組みも数多く行っていた(在宅復帰へ向けた取り組みは様々聞くし、学会等でも多く報告がなされている)。Virtualというと少し突飛なアイデアのように思うかもしれないが、すでに日本でも似たような取り組みが行われており、その根底にある考えは同じであった。そう考えるとまだまだ自分が勉強不足なだけだ。反省したい。

参考にしたレポートはこちら
South Devon and Torbay | The King's Fund