2015/11/23

地域を支える「民の力」 (2015/6/26・7/3 北海道新聞 朝刊)

先日、片道4時間、羅臼からバスで釧路まで病院に通う新聞記事を紹介した(片道4時間のバスで病院に行く北海道)。今、気温がマイナスの北海道にいるのだが、東京の家から札幌までちょうど4時間くらいだった。改めてバスの時間が長い!と感じた次第だ。

少し前の記事になるが、6月26日、7月3日の北海道新聞に「医療過疎のいま」と題し、2回の記事が載っていた。

4時間通わなければならないのは羅臼が特別なのではなく、北海道の医療環境の特徴と言えよう。記事を一部引用する。
後志管内黒松内町は(中略)町国保病院について、来年4月に北海道勤労者医療協会(札幌)を指定管理者とし、運営委託する準備をしている。
(中略)道勤医協は初期診療に幅広く対応する総合診療医を置き、高度医療が必要な患者は都市部の総合病院に送る体制を想定。40床の病院から19床の有床診療所に再編するが、救急患者の受け入れは続ける。
(中略)町は民間委託により「財政負担も軽減できる」(佐藤雅彦副町長)と説明する。
病院を維持することは困難であり、有床診療所に再編しなおす検討をしているとのこと。指定管理者制度を活用することで、財政負担軽減を図りつつ、医師確保を期待しているのだろう。

地方の人口規模に大きく左右されるが、近距離に病院が必ずあることは決して当たり前ではない。有床診療所への転換は受け入れざるを得ない選択肢なのだろう。(身近なところでは、有床診しかない離島に住んでいる義父は、検査入院や手術のときには片道3時間以上かけて東京に来ているが、それを当たり前と受け入れているように思う。)

一方で興味深い動きもある。白老町の事例だ。これも記事を一部引用する。
地域医療を守るには、住民の理解も欠かせない。胆振管内白老町の白老町立病院は患者の減少を理由に、戸田安彦町長が13年9月、「原則廃止」に言及。
苫小牧市の病院などに通うことが多かった町民に、町立病院を積極利用する機運が生まれ、14年度の医業収益が見込みを上回る見通しとなるなど経営は改善。町は原則廃止方針を撤回し、施設建替も検討することにした。
病院が廃止になっては困る!と住民が急に使い出したらしい。これは交通の便の良い都市部でも似た課題が見られる。車で20分行けば大病院があると言い、地元の人は、地域の自治体病院に行かない。そのために財政的に厳しい状況になってしまっている。

でも、皆が利用するのであれば、その病院の財政状況は改善する。当然だ。

地域医療構想では、医療者を中心にどのような医療機能を提供すべきか議論がなされているが、本来は、理想の医療環境を整えるため、患者の行動を変えることも含め患者が積極的に議論に参加しなければならないのかもしれない。

ただ、白老町の事例もそうだが、追い込まれるところまで追い込まれないと住民はなかなか真剣に考えようとしない。正直、「住民を巻き込む」というのは理想論であって、現実はなかなか難しいだろう。