2016/04/03

教育と医療の共通点 書評: 「学力」の経済学(前半)

教育と医療は似ている点が多い。まず義務教育として、小学校からスタートし、中学校、高校、大学と進級していく。小学校から私立の学校に行く人もいるが、多くは公立の地元の学校に通う。一方で、高校、大学と進学するにつれ、私立を選ぶ人が増え、遠方の学校にも行く。医療も同様、風邪をひくと身近なクリニックに行き、虫垂炎になると近くの病院に行く。がんになると近くの病院で手術を受ける人もいる一方で、遠くの病院まで行く人もいる。

そのような共通点ゆえに、学校選び、病院選びの本やサイトがあるのかもしれない。学校は入試というハードルがあるため、学力等を目安に選択肢が絞られる。一方、病院はフリーアクセスゆえ、どこでも選べる。だからこそ、病院選びには難しさもあると理解している。

教育について、データに基づく議論を分かりやすく書いてくれている本が中室牧子氏の『「学力」の経済学』だ。文科省の「全国学力・学習状況調査」の結果について、都道府県別の順位がマスコミ等で大々的に報じられることに対し、次のように、ばっさり切り捨てている。
公表のたびに大きな話題になる学カテストの都道府県別順位ですが、実は私は、これは学校教育の成果を測るうえではほとんど意味がないと考えています。
その理由について、2つのことを指摘している。1つ目はそもそもの背景となる学力の違いだ。この点については生産関数を用いて説明している。
教育生産関数におけるアウトプットは学力であり、インプットは、図5にあるように、「家庭の資源」(親の年収や学歴、家族構成など)と「学校の資源」(教員の数や質、課外活動や宿題など)の大きく2つに分けられます。そして、標準的な学力の分析においては、家庭の資源が学力に与えている影響を取り除いたうえで、学校の資源が、それぞれどの程度子どもの学力に影響を与えているかを明らかにしようとします。

教育生産関数(上の引用した文の「図5」のこと
出所: 「学力」の経済学 (中室牧子著) の図を基に作成

生産関数に準ずる考え方について、以前、医療と教育の「ランキング」の共通点として、このブログでも話題にしたことがある。

病院ランキングと高校ランキングの共通点 - 医療、福祉に貢献するために

さきほどの教育生産関数を参考に、医療の生産関数を作成してみた。

医療生産関数
上の教育生産関数を参考に作成

病院の純粋な実力は、インプットとアウトプット、両方明確にしなければならない。なので、ランキングは、アウトプットだけで並べることも危険だし、ましてや病院の資源だけで並べることも危険なのだ。

(後半に続く)