2016/04/05

データを開示すれば、勝手に分析しだす 書評: 「学力」の経済学(おまけ)

『「学力」の経済学』に関する話の最後に、強く共感した箇所を引用しておく。
南アフリカは、労働力調査や家計調査などの政府統計の個票データをインターネット上で世界中のすべての人に公開しています。この理由について尋ねたところ、「データを開示すれば、政府がわざわざ雇用しなくても、世界中の優秀なエコノミストがこぞって分析をしてくれる」という答えが返ってきました。
医療の世界も同じだ。プライバシー等への配慮がなされるならば、これほど価値ある手法はないだろう。この方法がいかに優れているかは、自分が説明するまでもない。次の一文のとおりだ。
なんというクレバーな方法でしようか。研究者は、常に「Publish or Perish(出版か、消滅か)」という強いプレッシャーに晒されていますから、情報量が多く、代表性のあるデータであれば、多くの研究者はそのデータを分析して、論文を書きたいと思うでしょう。南アフリカ政府は、その研究者の性質をうまく利用しているのです。実際に南アフリカ経済に関する研究はデータを公開するようになってから、急速に進みつつあります。
医療のデータも開示されれば、研究が進むだろう。DPCのデータに限って言えば、現状の限られたデータであっても、様々な論文が発表されている。レセプトデータ等のナショナルデータベースやDPCデータ、外科系のNCD等々、活用の自由度が高くなれば、今まで以上に価値ある論文等が発表されるに違いない。

次に引用した一文も強く共感した部分だ。
国民の税金を投じて収集されたデータは政府の占有財産ではありません。国民の財産であるべきものです。このデータを有効利用してほしいと思っているのは、私だけではないはずです。
データの有効利用を意識した取り組みがどの領域においても重要だということだろう。来年度からDPC病院では実績開示により係数の評価が始まる見込みだが、データ有効活用の視点が足りないように思う。『研究者や民間事業者が勝手に実勢開示したくなる』データというものを開示した方が大きな価値を生むように思う。

実績開示、情報の資源化の観点が抜けている - 医療、福祉に貢献するために