2016/10/11

院外処方から院内調剤へ 街の光景はどうなったか(後半)

昨日(院外処方から院内調剤へ 街の光景はどうなったか(前半))の続き。

院外処方から院内調剤へ切り替えた結果、景色は変わったのか。

■すでに撤退、もしくは撤退を予定している薬局が

滝井駅から病院までのメインストリートには、すでに閉局したところも。テナント募集の掲示が出ていた。インターネットで、この店舗の情報を探すと、「若干空いているので利用していた・・・、新病棟に変わると院内で薬が出るのでもうここに来ることは」といった感じのクチコミがあり、厳しい現実を目の当たりにする。


この向かいの薬局も、11月末で営業を休止する旨の掲示が出ていた。すでに9月中旬以降、スタッフを削減しているらしく、院内調剤への切り替えの影響は甚大であった。

■営業している門前薬局に患者がいない

このようにすでに営業を止めたり、縮小している薬局が出始めている状況下において、残りの薬局に患者が集中しているのでは?と考えてみたのだが・・・。

病院の目の前にある薬局など、営業をしている4店の中をぱっと見たところ、患者はわずか1名しかいなかった。13時頃という時間のせいかもしれない。ピークの時間帯を若干過ぎていたのかもしれないが、大学病院の目の前で、これだけ閑散としているケースはまずありえない。

その証拠に、病院の院内薬局には、30人以上の患者が処方を待っていた。つまり、閑散としている理由は、患者自体が病院にかかっていないのではなく、薬の処方の場所が変わってしまったためと言える。

■待ち時間は? 利便性は?

30人以上の患者が院内薬局で待っている様子は、一昔前ならごく当たり前の光景であり、それ自体に驚きはない。しかし、院外処方をしていた病院が院内に切り替えたことで、やはり多少「待たされ感」は生じているようだ。

院内に掲示してあった患者からの声には、
院内処方になり、待ち時間がかかり不便になりました。3ヶ月分の薬を持って帰り、買い物などするのに不便です。家の近くでもらえる方が良かったです。
というようなものがあった。

医療の質的な評価については、待ち時間だけでないため、これだけで質の低下を論じることは適切でない。また、家の近くでもらいたいという点も医療の本質ではない。しかし、まったく無視することもできない意見だろう。個人的には、切り替わったことで説明が丁寧になったか否か、医学的管理が向上したかどうかなどの気になることがあるのだが、このような点は今後の学会発表・論文などを待ちたい。


今回、このような光景を見て、門前薬局がいくら努力していても、院外処方から院内調剤に切り替えてしまえば、これまでの経緯などはまったく無視され、患者と薬剤師・薬局との関係性などは簡単に壊れてしまうように感じた。院外処方がいいか、院内処方がいいかの議論は、狭義の医療の質だけでなく、利便性なども含めた広義の質を考えることが重要であり、また、院内・院外という2択の議論だけではなく、切り替え時の影響についても考慮することが重要であるように感じた。