医療、福祉に貢献するために

医療、福祉に貢献するために
~ 株式会社メディチュア Blog

2016/12/30

地図を広げ、戦略を考える

最近、全国各地の医療需要分析をしている。先月頭に開催していただいたセミナーでも、高知や千葉など、色々特徴的な地域をピックアップし、分析方法と経営への活用方法などを紹介した。

下の茨城県の図は、ビジュアル的に分かりやすさを追求した事例。右が高度急性期・急性期、左が回復期・慢性期。上が2025年、下が2040年。すべて同じスケールで、2015年の医療需要と比較している。


医療需要推移予測(赤:減少 緑:増加)
出所: 国立社会保障・人口問題研究所の
将来推計人口を参考に独自シミュレーション
※茨城県地域医療構想(案)の地図に色付け

グラフを作るよりも手間はかかるが、目的によって、ビジュアライゼーションは有益である(≒目的がなければ、時間の無駄)。

余談だが、戦国武将や大名が戦略を考える際に地図を見ていたかどうかは定かではないが、ウェブ上で国立博物館のデータベースの古地図を見ることができる。
地域・分野から探す古地図 - 東京国立博物館所蔵古地図譜データベース - 東京国立博物館
物事を考える時に、地図を広げるのは、いつの時代でも共通なのではないだろうか。

2016/12/26

クリスマスだからチキン? いえ、違います ~集約化の余地を考える~

たまには、まったく異なる分野の統計データを見てみた。

子供のころ、自分の家には卵を産むためのニワトリがいた。犬や猫をペットとして飼う多くの家と異なり、ニワトリは珍しかった。ペットとしてのニワトリは、想像以上に人懐っこく、ちょっとした自慢だった。

下記のデータは、あくまでも養鶏農家の数値であり、自分の家のようなペットは関係ないのだが、その戸数(青線)は減少の一途である。一方で、ニワトリの数(オレンジ線)はあまり減っていないことが分かる。卵を食べる数はそれほど変わっていない。

採卵鶏の飼養戸数と飼羽数(単位:千羽)の推移(クリックで拡大します)
出所: 農林水産省 平成28年畜産統計を基に作成
※調査が休止された平成17年、22年、27年の値は前後の年の数値の平均値で補間
つまり、1戸あたりのニワトリの数が増えているということだ。集約化が進む要素には、大規模な養鶏農家が増えている、小規模な養鶏農家が減っている、様々なことが考えられる。(統計上、1997年までは300羽以上、1998年以降は1000羽以上の飼養者が対象となっているため、考察には若干注意が必要)

集約化の背景には小規模農家の経営的な悪化などがあるのかもしれない。卵は物価の優等生などと言われているが、経営的な面は小売価格だけでは判断できない。おそらく飼料代や人件費などのコスト面は集約化のメリットがあるに違いない。

そして、集約化が進む大きな理由に『卵は運べる』ということが挙げられる。採ったその場で消費する必要はなく、遠くまで運ぶことができる。卵を大量に消費している東京の都心に養鶏場を作る必要はない。当たり前の話だ。

医療で考えるならば、『運べる』医療は集約化の進む余地が大きい。概念上の『運べる』医療とは、患者が自ら移動できる医療、すなわち、がんなどの医療である。実際、東京の都心のがん専門病院には、新幹線に乗って遠方から来る患者が少なくないという。集約化の余地がある中で、その領域に力を入れるには、相当な「抗う」力が必要である。

余談だが、クリスマスでチキン、ニワトリを思い出したわけではない。この週末、実家のペットとして、ニワトリのあとを継いだ犬が亡くなったためだ。

2016/12/21

政府の進める「見える化」 活用しない手はない

週刊エコノミスト 2016年11月29日号の気になったページ
先月の週刊エコノミストの記事が気になって、1ヶ月近く、コピーしたものを机の脇に貼っている。

週刊エコノミスト 2016年11月29日 特大号 特集:おカネと健康 都道府県ランキング

この記事に出てくる「経済指数」は内閣府のサイトで見ることができる。

経済・財政と暮らしの指標「見える化」ポータルサイト : 経済財政諮問会議 - 内閣府

このポータルサイトでは、取り組みの意図として、以下に示すような3点を挙げている。ただ、地域間での比較は万能ではない。改革を進めていくには、関係性の裏側にある情報を読み解き、適切な方向を定める能力が求められる。エコノミストの記事を壁に貼ったのは、入院・外来の受療率を横軸にしたグラフの裏側には、高齢化率や人口あたりの病床数、医師数等の情報があると考えており、それらと経済指数の関係性を見ることが楽しいのでは?と思ったからだ。
経済・財政一体改革を着実に進めるために、公共サービスの需要・供給に関係して、1.関係主体・地域間で比較できて差異が分かる、2.行政の運営改善や成果の有無・程度が分かる、3.改革への課題の所在が分かる、という3つの「分かる」に結びつく「見える化」に取り組んでいます。
内閣府の見える化ポータルサイトでは、経済指数を構成する各項目について、都道府県・市町村単位でダウンロードすることもできるようなので、分析したい自分にはとてもありがたい。このようなオープンデータ化は、活用してなんぼ、である。ぜひ活用してみたい。

2016/12/19

新聞のジャケ買い(本当は買ってなくて、もらったものだけど)

先週のニュース。

米FRB、1年ぶり利上げ0.25% 全会一致  :日本経済新聞

FRBの利上げ。以前の仕事であれば、細かく気にしたのかもしれないが、今はあまり・・・。

その翌日のウォールストリートジャーナル。気になったのは、そのトップページのグラフ。

インフレ率や失業率の予測推移と実績のビジュアル化
新聞はホテルでもらったもの
インフレ率、インフレ調整済みGDP成長率、失業率について、予測値の推移と実績値を年ごとに色を分け表現している。ばらつき具合もひと目で分かるようになっている。また、カラフルなことが、グラフを見やすくする大事な要素になっている。

同じ日の記事には、サノフィのランタスの話題や、ジェネリック医薬品の話題もあったのだが、それらではなく、このグラフにひかれてしまった。

ちなみに、この記事はネットで読むことができる(サインインしないと読めないかも・・・)。

Fed Raises Rates for First Time in 2016, Anticipates 3 Increases in 2017 - WSJ

きれいなグラフ = よいグラフ  とは必ずしも言えないが、きれいなことは興味を持ってもらう大事な要素である。説得力を増すためには、シンプルでわかりやすく、そして、きれいなグラフを目指したいものだ。

2016/12/18

将来のサービスの受け手が議論に加わることの重要性

先月話題にした兵庫県豊岡市の病院機能再編、その後、進展があったようだ。

人口減少と市町村合併の先にある医療システム維持の模索

12/6の記事。

記事によると、病床廃止の案に対し、医療関係者・住民の団体が署名活動などを行い、反発していたとのことで、このような活動自体は珍しくないだろう。医療に対し地域住民が興味を持っている良い反応とも言える。

しかし、高齢者医療に対する高回転化が進んでいる。医療の内容により、多少理由は異なるが、基本、在院日数は短くなっている。
  • 急性期医療: 低侵襲化を主とした在院日数の短縮
  • 回復期医療: アウトカム重視の短期集中的な医療提供
  • 慢性期医療: 病院への入院を前提としない療養環境の選択
高齢者が増えるからと言って、病院施設に投資を行えば、時代の進展とともに重荷になる可能性が極めて高い。これまでも、先週のCBnewsへの投稿記事や、野村ヘルスケアのレポートで述べてきたことだ。


地域医療構想に関するレポート

ちなみに、繰り返すが、住民団体の主張が間違っているというつもりはまったくなく、正しいと思う。毎日新聞の記事の見出しにあるとおり、病院側の「時間かけ協議を」とあるように、医療提供側が、このような医療環境の変化等の情報を整理し、長期的なビジョンを示すことが必要だろう。

このとき、「今、医療を必要とする人たち(≒高齢者)」が、この機能縮小のビジョンを聞けば、ネガティブな反応になるだろう。大事なのは、その高齢者たちが天寿をまっとうする後に残される「今はあまり医療を必要としない若者たち」がその議論に加わっておくべきだ・・・という理想論は虚しく響くので、分かりやすいデータを示していくことが弊社の役割だと認識している。
(この日高の件、もし自分が知らないだけで、若い世代が議論に十分加わっているのだとしたら、ごめんなさい)

2016/12/12

過去のデータを読み解き、現代に示唆を得る

大学のときデータ分析の面白さに目覚め、気がついたら職業になっていた。不思議なものだ。

大学で医用工学を専攻した当初は、実験がやりたくて医療系のデータ分析に時間を割くとは考えてもいなかった。健診データの分析には相当手こずった。当時の先輩に「こんな分析、やりたくない」と愚痴をこぼし迷惑をかけたが、その先輩から探究心とひたむきに取り組む姿勢を学べたことは、大きな財産である。

データ分析の面白さのひとつは、過去を読み解くことだ。データを計測した瞬間から、そのデータは(計測のエラーも含め)変わらない事実となり、過去のものとなる。その過去に対し、真摯に向き合い紐解くことで、何を学ぶことができるか。この分析の時間は何事にも代え難い貴重なものである。(・・・にも関わらず、最近は仕事が溢れてしまって、多くの方にご迷惑をかけている状況ゆえ、分析に追われてしまっているのが実情だが)

今週は海外調査の仕事でワシントンDCに。結局、こっちに来ても分析ばかりなのだが、その合間、時差ボケ修正のため博物館などに行ってきた。National Archivesの建物の前にStudy the Pastの石像があった。Archivesの建物の前にあるのが意義深い。

ワシントンDCのNational Archivesにある「STUDY THE PAST」の石像
同じく「WHAT IS PAST IS PROLOGUE」の石像
初心を忘れず、データ分析をしようと思った。

2016/12/10

人口動態から見えてくる医療需要の変化予測

人口は社会保障を考える上での基本的な要素である。言うまでも無いが、医療制度や年金制度を考える時に、将来人口を推計することは必須である。昨年、国勢調査が終わり、将来人口の推計も新しくなるようだ。

人口部会審議会資料 |厚生労働省

下記のグラフは、茨城県の高度急性期・急性期の医療需要推移を予測したものだ。まだ従来の推計データを用いたものだが、医療圏別に見た場合、つくばだけがまったく異なる動きになっていることが分かる。

茨城県 二次医療圏別 高度急性期・急性期医療需要推移予測
出所: 国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推移等を参考に作成
町の歴史など背景の違いが、年齢構成の違いとなり、その結果、医療需要推移に大きな違いが生まれる。

こういったエリアでは、病院経営の見通しを立てることが難しい(正確には「複雑」と表現すべきか)。客観的なデータから得られる示唆を経営に反映することが大事だと思う。

2016/12/05

地域医療構想に関するレポート、表紙のPDFが見れます

今年の9月、地域医療構想に関するレポートを、野村證券のヘルスケアノートに寄稿させてもらった。そのことは以前ブログで紹介しているのだが、気がついたら、表紙はPDFで見られるようになっていた。


表紙のPDFはこちら

これ以外のヘルスケアノートのバックナンバーはこちらに

ヘルスケアノート - 野村ヘルスケア・サポート&アドバイザリー

少子化・高齢化が地域によって異なる様子を可視化するのに、最近、下のグラフを用いている。右下から左上に5年毎に動くグラフなのだが、縦横のずれで、各地域の少子化・高齢化の差異を定量的かつ直感的に把握することができる。

新潟県の二次医療圏 少子高齢化の進展推移予測
(画像をクリックすると拡大します)
出所: 国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推移を基に作成
上のグラフは市町村単位や、大字単位でも作成することができる。先週から弊社スタッフは団地単位での可視化にチャレンジしているらしいが、いったいどうなることやら・・・。

2016/12/02

運転免許の保有状況から地域性を考える

高齢者の自動車事故のニュースをよく聞く(本当に多いのか、高齢者の事故がとりわけニュースになっているのか定かではないが)。

先日も、ある病院グループの研修で講師を務めながら、その懸念について話を聞く機会があった。事故のニュースは病院が現場となってしまうことも少なくないだけに、深刻な問題だろう。

唐突ではあるが、別の研修資料を検討している流れで、高齢者の免許保有状況について都道府県の比較を行ってみた。

まず、運転免許保有者を100とした場合の75歳以上の保有者割合。これは高齢化の進展に連動しているので、下のようなグラフになる。東京は75歳以上の人口が少ないから、免許保有者に占める高齢者の比率も低い。島根県は逆である。
75歳以上人口比率(横軸)と運転免許保有者に占める75歳以上比率(縦軸)の都道府県比較
※画像をクリックすると拡大します
出所: 国勢調査、警察庁運転免許統計(それぞれ平成27年)を基に作成

次に、75歳以上人口を100とした場合に、75歳以上の免許保有者の割合を見た。横軸はさきほどと同じ75歳以上の人口比率である。
75歳以上人口比率(横軸)と75歳以上の運転免許保有者割合(縦軸)の都道府県比較
※画像をクリックすると拡大します
出所: 国勢調査、警察庁運転免許統計(それぞれ平成27年)を基に作成
すると、群馬、茨城、栃木の北関東3県や、山梨県、愛知県、滋賀県などが上に移動してきた。これは、高齢者になっても運転免許が必要な県、運転免許を手放せない県と言えるのかもしれない。

ちなみに、運転免許は運転する・しないが判別できるものではなく、あくまでも資格の有無でしかないので、これだけで事故の発生状況と結びつけることは難しい。事故発生の観点では、ペーパードライバーこそが最良のドライバーと写ってしまう。それゆえ単純に分析できるものではないだろう。

2016/12/01

『効率性係数への一本化』は2025年問題への好手

昨日、CBnewsに記事を掲載いただいた。今回は機能評価係数Ⅱのインセンティブにフォーカスし、効率性係数に一本化した場合のシミュレーションを行った。

シンプルなインセンティブの方が病院は動く | 医療経営CBnewsマネジメント

病院が「動く」と、やや上から目線になっているかもしれないが、こちらが動かしてやろう、病院は従うものだ、という意図ではない。適切な評価体系にすれば、適切な努力をするという意味であり、すなわち、それは現状努力をしているのに、報われていない病院があるのでは、という意味でもある。

効率性の追求には、病院側に大きな負担を強いる。人的負担の増大に代表されるように。医療は、製造業のように生産ラインにものを流すスピードを上げたり、稼働時間を延ばしたりすれば、勝手に製品が出来上がるものではない。そこには多くの人の手を介する業務がある。また、電子カルテシステムの導入などによる効率化の余地もあるが、それも何かしら病院側の負担を要するものだ。

医療の効率性向上の議論は、医療財政の悪化に対し、病床過剰地域での在院日数短縮などが改善余地として挙げられていることが多い。もちろん、それも重要である。個人的には、それ以上に重要なことが、2025年~2040年までの首都圏で起きる問題への対処だと考えている。今後、東京周辺の首都圏では、高齢化の進展に伴い、急性期医療のベッドが不足する想定である。ベッドを増やすという解決策もあるが、それはすでに高齢化が進んだ地域の状況を見れば、増やしたベッドに苦慮しており、長い期間を見た場合に最善策と言えないことは明らかである。現状の限られたベッドをいかに活用するか、効率的な医療提供は極めて優先順位の高い解決策であると考えている。

だからこそ、今、効率性の向上に対し、真摯に努力している医療機関は最大限評価されるべきである。

・・・というようなことを考えながら、今回の記事を書いた。(そのような真意をご理解いただければ、やや上から目線であることにはお許しをいただけるのでは・・・と信じている)

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